ジャーナリストらによるSIMロック討論会「SIM LOCK in Japan」~早急なSIMロック解除は業界に混乱も~

2010年04月09日 16:05 by 三上洋
「SIM LOCK in Japan」討論会

「SIM LOCK in Japan」討論会

総務省による携帯電話のSIMロック解除の動きが進む中、4月2日(金)、ジャーナリストらによるSIMロック解除についての討論会が行われた。インターネットの動画配信サービス・Ustreamを使ったもので、著名なジャーナリスト・評論家ら8名が集まって活発な議論を交わした。議論は分かれたが、「早急なSIMロック解除の義務化は、業界だけでなくユーザーにも混乱を招くのではないか」という声が目立った。



公開ヒアリング直後に行われたSIMロック討論会

総務省は携帯電話端末を自社(キャリア=携帯電話会社)でしか使えないように制限する「SIMロック」の解除を進めようしている。6月末をめどにSIMロックのガイドラインを策定する方針で、4月2日(金)には関連団体などを集めた公開ヒアリングが行われた。


左から木暮祐一、神尾寿、西田宗千佳、司会の菊池隆裕氏、本田雅一、石野純也の各氏。またSkypeを使って、石川温、山根康宏の各氏も参加した

左から木暮祐一、神尾寿、西田宗千佳、司会の菊池隆裕氏、本田雅一、石野純也の各氏。またSkypeを使って、石川温、山根康宏の各氏も参加した


この公開ヒアリング直後に行われたのが、ジャーナリスト・評論家などが自主的に集まった討論会「SIM LOCK in JAPAN」だ。Twitterでの呼びかけで開催されたもので、著名な評論家・ジャーナリストが集結してSIMロックに関する議論を戦わせた。


司会を務めた菊池隆裕氏(日経BP社)

司会を務めた菊池隆裕氏(日経BP社)

まず司会の菊池隆裕氏(日経BP社)が「ここへ来て唐突に『SIMロック解除へ』というマスコミの報道と総務省の動きがあり、問題意識を持った皆さんが集まっている。SIMロックはどうしていくべきか討論していきたい」として各人の意見を聞いた。


ジャーナリストの西田宗千佳氏

ジャーナリストの西田宗千佳氏

ジャーナリストの西田宗千佳氏は「新聞や一般誌は『SIMロックが日本の携帯電話産業の競争力を殺いでいる、ガラパゴスの原因である』という論調だが、私は関係がないと思っている」と発言。


これについて香港からskypeで参加した携帯電話研究家でフリージャーナリストの山根康宏氏も「SIMロックと端末の国際競争力を混同している。たとえば韓国にはSIMロックがあるが、サムスンなどが世界で躍進している。切り離して考えるべきだ」と賛同した。



現在の携帯電話でのSIMロック解除には疑問
ケータイジャーナリストの石野純也氏

ケータイジャーナリストの石野純也氏

SIMロックについての議論では、ケータイジャーナリストの石野純也氏は「SIMロック解除を総務省が強制することには反対。今まではキャリアがユーザーサポートを行ってきたが、ロック解除によって後はどうぞと放り投げてしまうことになる。一般ユーザーが大混乱することを危惧する」と述べた。


ケータイジャーナリストの石川温氏はハワイからskypeで参加

ケータイジャーナリストの石川温氏はハワイからskypeで参加

ハワイからskypeで参加したケータイジャーナリストの石川温氏も「SIMロック解除を強制する必要はないと思っている。現実問題としてiPadは事実上のSIMフリーの状態で入ってこようとしている。お上がギャアギャア言わなくても、外圧や市場環境の変化によってSIMフリー端末が出てくるだろう」と分析した。


ジャーナリストの本田雅一氏

ジャーナリストの本田雅一氏

それに対してジャーナリストの本田雅一氏は、「SIMロックが前提で作られている現在の端末での解除には反対するが、LTE(Long Term Evolution:ロング・ターム・エボリューション、現在普及している第3世代携帯電話(3G)の次にくる新たな携帯電話の通信規格)などの次世代ケータイでは、SIMロック解除がいいのではないか」という立場だ。


また携帯電話研究家で武蔵野学院大学准教授の木暮祐一氏は「現在の携帯電話業界は、端末が売れなくてメーカーは疲弊、ユーザーも得をしていない、それに対してキャリアの一人勝ちとなってしまっている。ユーザーが選べる環境にするべきで、SIMロック解除の議論を進めていくべきだ」と述べた。



SIMロック解除によって何が起きる?

SIMロックが解除された場合について、石野氏は「いまSIMロックを解除すれば、iPhoneユーザーがどっとNTTドコモへ行くことになる。それでソフトバンクがもつんだろうかと疑問。そこまでの競争環境は過剰ではないか。ドコモのような体力のある事業者だけが有利になるのは問題で、ソフトバンクがSIMロック解除に猛反対するのもわかる」とした。


フリージャーナリスト/コンサルタントの神尾寿氏

フリージャーナリスト/コンサルタントの神尾寿氏

フリージャーナリスト/コンサルタントの神尾寿氏は「日本のメーカーは今までキャリアだけに端末を売ればよかった。しかしSIMロックを解除すれば、一般ユーザー向けの販売になる。販路を持ったりマーケティングをするなど、かなりの投資が必要だろう」との意見だった。


端末メーカーがSIMロック解除でどうなるかという点について、石川氏は「メーカーの担当者にインタビューしているが、キャリアを離れて自力で開発していきたいという声は少ない。まだそこまでの発想には至ってないようだ」と述べた。それに対して西田氏は「日本の端末メーカーの商品企画力は言われているほど低くはない。現在は型にはまったものが多いが独自の端末は作れる。また部品など日本のメーカーが活躍すべきところは色々ある」と分析した。



SIMロック解除は、色々な立場の人でもっと広い議論をしてほしい
携帯電話研究家で武蔵野学院大学准教授の木暮祐一氏

携帯電話研究家で武蔵野学院大学准教授の木暮祐一氏

この直前に行われた総務省のヒアリングについては、木暮氏が「端末メーカーの団体もヒアリングに出ていたが、キャリアの顔色を伺って建前のことしか言わないという印象を受けた」と述べた。


神尾氏も「ケータイサイトを作っているコンテンツプロバイダーがいなかったのは問題。もっと幅広く携帯電話関係者やユーザーを集め、時間をかけてSIMロックのことを議論していくべき。そうしないとせっかく面白い形で進化してきた日本のモバイルを無駄にしてしまう」との意見だった。


携帯電話研究家でフリージャーナリストの山根康宏氏は香港からskypeで参加

携帯電話研究家でフリージャーナリストの山根康宏氏は香港からskypeで参加

今後について、山根氏は「総務省が将来像をどう考えているのかわからない。ユーザーが不利益にならないように持っていくことが重要だ」と発言。


本田氏は「ユーザーとしては次世代のデータ中心になってきた時に、自由にサービスを選べる環境になってほしいと思っている。そこで荒療治としてSIMロックを解除するという総務省のやり方もありかもしれない」と述べた。


SIMロック解除については議論が分かれたが、現在の端末を今すぐSIMロック解除するのは問題だ、という点では共通していたようだ。最後に司会の菊池氏は「SIMロック解除について、色々な立場の人がもっと広い議論をしてほしい。解除を強制するだけでなく、ユーザーにとって選択肢があるほうがいいということではないかと思う」とまとめた。



4月16日(金)にSBM・松本副社長、日本通信・福田COO参加の第二回討論会
今回の討論会はジャーナリストらの自主開催によるもの、インターネットのライブ放送・Ustreamを使って行われた

今回の討論会はジャーナリストらの自主開催によるもの、インターネットのライブ放送・Ustreamを使って行われた

今回の討論会は、主催は参加者自身によるもので、Ustreamの中継もライターである筆者が行った。わずか2日前に開催が決まったにも関わらず、同時視聴者数で最大560人、累計で2000人以上の方に視聴いただいた。堅めの議論にも関わらず多くの方が視聴したことは、SIMロック解除についての関心が高い証拠と言えそうだ。


第二回のSIMロック討論会も、Ustreamでの放送が決まっている。ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長、日本通信の福田尚久代表取締役専務ら、キャリアのトップクラスが参加するほか、サプライズゲストも予定しているので、ぜひご覧いただきたい。



第二回 SIM ROCK in Japan(SIMロック討論会 Ustream放送)


  • 2010年4月16日(金) 21時~
  • 参加予定:ソフトバンクモバイル松本徹三副社長、日本通信の福田尚久代表取締役専務ほか
  • URL等のアナウンス:twitter:石川温三上洋
  • ウェブサイトでの告知:ライター三上洋事務所


なお第一回の討論会のビデオは、Ustreamで視聴できる(ミスにより冒頭分は録画されていないので注意)。URLは変更される可能性があるので、筆者のウェブサイトからご覧いただければ幸いだ。