
5月28日より発売されるiPad
5月10日に予約受付が開始となったアップル・iPad。価格等の詳細が発表されたとき、誰もが驚いたのがソフトバンクモバイルのSIMカードロックがかかっているという点だった。
1月にアップルCEOのスティーブ・ジョブズ氏がiPadを発表した際には「すべてのモデルでSIMロックがかかっていない」ということだった。その発言を受けて、NTTドコモ・山田社長は「SIMロックフリーのiPad向けにmicroSIMを提供していく」と宣言していたくらいだ。
蓋を開けてみれば、ソフトバンクモバイルのみが取り扱いを行い、当然のことながらSIMロックがかかっている。ソフトバンクモバイルショップで売られるものはSIMカードロックで安く買える、アップルストアのものは高いけれどSIMロックフリー、というのが理想だったが、それも叶わぬ夢に終わってしまった。
SIMロックがかかっていることに対し、ソフトバンクモバイルの孫正義社長は「NTTドコモには800MHzの周波数があって、うちには存在しない。明らかに不利な条件。iPadは強力な武器であって、絶対に渡せない」と語った。
おそらく、旧知のスティーブ・ジョブズ氏との親密な関係もあっただけでなく、これまでソフトバンクモバイルが熱心にiPhoneを日本で販売してきたこと、相当数のiPadを買い付けるという約束を果たした上での「世界で唯一のSIMロック」ということになったのではないだろうか。確かに、世界を見ても、これほどまでにiPhoneに熱を入れて販売を展開するキャリアはないだろう。孫社長のiPhoneに対する情熱がiPadにSIMロックをかけたといってもいいのではないか。
ソフトバンクモバイルは、やはりiPadをできるだけ手軽に購入できるようSIMロックをかけたのだと思う。持ち帰り価格0円を実現するにはSIMロックは不可欠だ。確かに2年間の割賦契約を結び、SIMロックではなく分割払いでユーザを縛るという方法も増えつつあるが、ソフトバンクモバイルは、不正契約などで甚大な被害を被ってきた経緯があるだけに、割賦契約だけでユーザを縛るというのにはかなり不安を感じているのではないか。
iPadやiPhone、さらにはスマートフォンなどのようにキャリアサービスに依存しない端末であれば、SIMロックを解除することは決して難しいことではないと思う。孫社長もSIMロック解除を全面否定しているわけではなく「いくつかの機種を出していくつもり」と、消費者がSIMロックのありとナシを選択できるようにするつもりのようだ。
昨今のSIMロック解除議論のなかで「メーカーがキャリアに依存したビジネスモデルから脱却して、自前で端末を売れるようになる」というメリットを強調する論者がいるが、メーカー自体は「SIMロック解除は歓迎していない」というのが本音だ。
(※特集記事「SIMLOCK in JAPAN」と「SIMLOCK in JAPAN 2010 vol.2」もご参照ください)

SIMLOCK in JAPANより三上洋氏(左)と筆者(右)
某大手メーカー幹部は「6月制定されるガイドラインに沿って端末を開発していくと思う。海外に持って行くと、現地のプリペイドSIMが使えるようにするなどのSIMロック解除になると考えられるが、このあたりはキャリアとの相談になる」と語った。実際、「SIMロックフリーでドコモ、au、ソフトバンクのすべてが使えるケータイを開発する気はあるか」と聞いたところ「そんなものはあり得ない」と一蹴されてしまった。
SIMロック解除が、メーカーの国際競争力の向上につながると力説する人もいるが、SIMロックが邪魔で外して欲しいという国内メーカーは皆無といっていいはずだ。キャリアが一生懸命に端末を売ってくれ、数百万台という台数を購入してくれるのであれば、メーカーは喜んでSIMロックをかけるというものだ。まさにアップルがその代表例。ソフトバンクモバイルが「一生懸命に売る」と約束すれば、iPadにもSIMロックをかけてくれるのだ。
ただし、ユーザから選択の自由を奪い、キャリアを1つしか選べない環境を作ってしまうのだから、ソフトバンクモバイルにはしっかりとした通信環境を整備してもらいたい。先日、発表した「電波改善宣言」は着実に実行してもらってどこででも快適にiPadを使えるようにしてもらいたいし、海外に行っても、現地のプリペイドSIMに匹敵する安価な通信料金を実現してもらいたい。
「SIMカードを入れ替えなくても安心して快適に使える」という環境をソフトバンクモバイルが提供してくれさえすれば、誰も文句は言わないはずだ。
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