AndroidとiPhoneの成り立ち
よく比較の対象となるアップル・iPhoneとグーグル・Android。
同じスマートフォンというカテゴリーに属するが、実際は生まれも育ちもそして製品の特性も大きく異なるものと言えるだろう。
2007年夏にアメリカから発売されたiPhoneは、アップルというメーカーのカラーが色濃く反映された商品だ。同社CEOのスティーブ・ジョブズが肝いりで開発した商品だけあって、他のパソコンやiPodに通じるデザイン性の高さがある。
搭載されているOSやタッチパネルによる操作性はアップルがパソコン向けOSを開発してきたノウハウが詰まっている。
またAppStoreというアプリケーション販売システムは、iTunesStoreという音楽販売の仕組みを生かしたものとなっている。
端末の販売こそ、各国の携帯電話会社が手がけているが、一方でアップルストアなどの直販店での販売も行う。携帯電話会社が販売権を手にするにはアップルと厳しい条件の契約を結ばなくていけない。
端末の開発から流通、アプリケーションの販売までアップルが一括して牛耳っている垂直統合モデルが築かれている。すなわちiPhoneはアップルのアップルによるアップルのためのスマートフォンと言えるだろう。
ここ最近、アップルでは「1国1キャリア」という販売戦略を見直しつつある。アメリカではAT&Tというキャリアが独占しているが、イギリスでは独占販売権を持っていたO2に加えて、Orangeが販売を開始。フランスとイタリアでは3キャリア、カナダでは4キャリアが販売を手がけている。
世界でシェアを獲得するため、販売キャリアを増やしている状態だ。日本でも独占販売がなくなる可能性もある。
一方、Androidは開発はGoogleが仕切っているものの、開発コードなどは公開されており、開発者が自由にさわることができる。
OS自体を利用し、独自にスマートフォンやカーナビ、情報端末を自由につくることができる。
実際、2010年1月にアメリカ・ラスベガスで開催されたCESではAndroidを搭載した白物家電や電子書籍ビューワーが相次いで発表されていた。
アップルはiPhoneという単一端末しか存在しないが、Androidは実に多彩なメーカーが参入する。海外ではすでにHTCやサムスン電子、モトローラが製品を投入済み。ソニー・エリクソンは今春に発売予定。日本でもシャープやNECが参入を表明している。
もちろん、Android端末を販売するキャリアも制限はない。日本でもNTTドコモがすでに発売しているし、ソフトバンクモバイルも今春に対応機種を投入予定だ。KDDIも対応機種を準備中だという。
日本のメーカーやキャリア関係者が口を揃えて言うのが「日本で売れるスマートフォンを作るには、キャリアのサービスにも対抗しないといけない」というセリフだ。すなわち、日本で登場するAndroidケータイは、キャリアが提供するプッシュメールをはじめ、将来的にはおサイフケータイやワンセグなどにも対応すると見られている。
こうした、日本市場に特化した機能を載せることができるのもAndroidの開発環境がオープンになっている点が大きい。
Androidはグーグル発のプラットフォームではあるが、同社が牛耳っていないだけに、無限の広がりが期待される。誰も、そのゴールは見えていないし、グーグル自身もわかっていないことだろう。
得体が知れず、将来像もまったく見えない未知の扉を開ける楽しみがあるのがAndroidの魅力と言えそうだ。