Android開発者を広げて情報を増やそう

2010年01月06日 17:31 by 日本Androidの会 幹事 嶋@てんてん

Android著者ディスカッション

Android著者ディスカッション

Google Androidは、オープンソースでできた携帯電話用のプラットフォームです。2007年にPC上で動作するSDKが登場し2008年に海外で初端末T- MobileG1が登場しました。そして2009年にはNTTドコモから「HT-03A」という国内初Android携帯電話が発売されました。2010 年には国内外で多数の端末の出荷が噂され、iPhoneの対抗馬としても注目を浴びています。


その話題の渦中、2009年11月30日に日本Androidの会主催のイベント「Android Bazaar and Conference 2009 Fall」(以下ABC2009Fall) が開催され多くの参加者を集めました。その中のセッションの一つ「Android著者ディスカッション」では、Androidの技術書籍を著した5名が揃 い、パネルディスカッションが行われました。


Androidの特徴は「オープンソース」として公開されている事ですが、その技術情報はソース以外はGoogleサイトに限られてしまいます。こ れら詳細情報は英語となってしまい、どうしても日本語の情報となると潤沢ではありません。そのような中で精力的にAndroidの技術情報を書籍にまと め、世の中に公開されている「著者」たちがいます。今回は日本Androidの幹事となっている5名が、著者紹介、苦労話、そして今後のAndroidの あり方とコミュニティーの関係についてディスカッションした内容を、モデレータを行った私がここで紹介させて頂きます。


著者ディスカッションメンバー


どういう人に読んでもらいたいか?

執筆した書籍を、どのような人に読んでもらいたいですか? という質問に、まず初めに飛び出したのが「やはりAndroidはアプリケーションを開発しようとしている人たちに読んでもらいたいですね」と木南氏。そ して「自分でもできるんだ、こんなに簡単にアプリケーションを作れるんだ! というのを作りながら体験して欲しんだよね」との発言。著書「アプリケーション開発入門」はまさにそのような思いを込めて書かれたそうで、要点となるサン プルソースを充実させて執筆されたそうです。


全著者の意見が合っていたのは「やはり作りながら、本を読んで頂きたい」という点でした。やはりアプリケーションは実際に作らないと、その難しさや、Androidアプリの明快/簡単さも体感できないからです。実際に簡単化は別にして。


これと、違う視点で「Google Android入門」著者の中村氏より「嶋さんと相談してプログラムができない人でも読んでもらえるよう、できるだけ初めの章はAndroidのモバイル 業界の位置づけや背景を中心に書きました」と紹介もらいました。拙著となりますが、両氏ともメーカでの開発経験があるためAndroidの書籍であるはず なのに、Androidの内容はほんの2/3だけで、残り1/3は携帯電話の基本的な事を書いてしまいました。やはりモバイルの中でAndroidが正し く発展していくためには、単純に「ガラパゴスに来た黒船」等の誤解を正しく解く必要があるという「親心」なのです。


ディスカッション風景

ディスカッション風景


どのように書籍を書きましたか?

書籍を一冊著すという事はとても大変な事です。各著者はどのようにして原稿を書いたのか、そもそも専業ライターなのかどうか?著者の素顔は興味津々な部分ではないでしょうか。


「私は専業でライターをしていません」というのが、実は全員なのです。みなさんどこかの会社に属されており、自己技術習得と興味で行っているとの事 です。そのため、本業は別にあり、その作業を行いつつ書籍を書かれたそうです。業務的に認められて就業時間内で書いた方もいれば、個人活動で休暇に書いた 人も、いろいろ。


「朝5時に起きて毎日少しずつでも執筆する習慣をつけました」との木南氏。日中は本業の仕事があるため、それ以外の時間で時間を捻出して執筆された そうです。とても健康的な生活のリズムです。それに対して「会社の仕事が午前様になる事もあり、そのあとAM2:00から朝方までメールのやりとりをしな がら書いていました」は、二人で執筆した中村氏と私です。やはりペースは人それぞれのようですが、本業持ちながらの著作活動は、かなり苦労が伴うようです。


執筆中で苦労した事は

執筆中には、苦労の逸話があるものです。まず全員が口をそろえて言ったのが「Androidのバージョンが変わる事」でした。ソフトウェアのバー ジョンが変更されると、書籍の図表を全て入れ替えなくてはならない、というのはITライターとしては良くある事。しかしAndroidの場合は状況は全然 違います。「ソースが動かなくなってしまうんですよ」と安生氏。監修された「初めてのGoogle Androidプログラミング」は、実は原書があり、洋書なのです。その洋書を翻訳家が訳した上で、安生氏が監修をしています。ところが、原本が対応して いるAndroidのバージョンと、日本で発売する時期のAndroidバージョンが違い、ソースがまったく動かなくなったそうです。原本のバージョンで そのまま出版するか、それとも新しいAndroidで書き直すか、かなり悩まれたそうです。が、結果としては「いばらの道」である、書き直す方を選んだそ うです。すると、全てのソースを書き直し、そして原書の内容をも修正する「大変な事」となったそうです(しかも元のバージョンでも動作しないソースも多 かったとか)。本人曰く「本書は、既に翻訳本とは言って欲しくない!」と話されていました。別のパネリストからは「そのまま、逆翻訳して英語圏で出版でき てしまうのではないか?(注:実際には不可能です)」という冗談が飛び交うほどでした。ちなみに、書籍のオビには「安生真氏が全サンプルコードを検証!」 と一行があり、この中に、こんな深いエピソードが秘められていたわけです。


江川氏も、初めに著した書籍はAndroid SDKバージョン「m3」で出版していましたが、その後m5が出てしまいソースが動かなくなってしまい、慌ててWebで差分ソースや追加開設を公開したそ うです。中村氏と私も、執筆準備時は「m3」でしたが、校正がスタートしてから「m5」に上がってしまい、直前でソースと画像の入れ替えを決断しました。


このようにバージョンでAndroid自体の仕様が変わっていくのは、まだβ版の時期でもあり、登場して間もないからの事です。最新のAndroidではアプリケーションレベルを設定し、互換性を定義できるので、このように動かない事は、少なくなると思われます。


苦労した中で、会場を沸かせたのが江川氏の発言。「Androidばっかりさわってないで私もさわってよ、と妻にいわれました」。どうも週末になる と、Androidのアプリケーションばかり作成していて、家庭サービスがおざなりになってしまったそうです。こういう苦労もありながら、Android の普及に貢献されているようです。


書籍のあり方とは

書籍だけではなく、最近はWebで記事を書いたり、BLOGに綴るなど、様々な方法で技術情報を広める事もできます。どうして書籍に取り組んだかと いう点について質問したことろ「やはり、紙という、媒体が魅力なんです。重みを感じます」と江川氏。それもそのはず、江川氏の最新著書「Google Androidプログラミング入門」は、なんと684ページの重厚さ。めくった手触りや、その厚みを頼りに調べたい内容のページを開く仕草が大切と熱弁さ れました。「調べたいところをヒットさせるならばPDFの書籍が欲しい」と木南氏、安生氏。会場からも同感との声がありました。


書籍を書いて良かった事は、多くの人と情報を交換できるきっかけとなった事です。私より、日本Androidの会の幹事になった経緯も著書がきっか けだった事を紹介させて頂きました。著書をもとに多くの人と情報の交換ができます。話をするにしても、知識や議論の「土台」となるため、多くの人で共有で きます。また、そうして多くの人と話を行う事で、もっと多くの事を楽しく学べ、オープンソースや英語情報のハードルが苦にならなくなります。


今後のAndroidとコミュニティ

Androidのアプリケーション開発系の書籍も、著者各氏の貢献もあり数多く出版されていると思ったのですが「書店に行くと、iPhoneと比べ てAndroidの書籍の少なさは見劣りして残念なんです。まだまだAndroidの情報は少ないのだなと実感してしまいます。やはり、iPhoneくら い多くの関連書籍が並ばないと」との発言がありました。そこで「Androidの書籍を執筆するのは、今日紹介されたような方々が書いているので、特別な 人たちではありません。是非これを聞いて(読まれて)いる方は、是非Androidの記事や書籍や原稿にチャレンジして下さい」とモデレータより。


Androidの技術情報は英語が大半という事もあり、一人で調査を行い悶々と悩んでしまうケースが大変多いと思います。そこは是非日本 Androidの会の様なコミュニティーで情報共有しながら、新しい書籍を多くの人が著して、そしてまたそれを土台に議論と情報の共有を多くの人でできれ ば、今後Androidの技術者のすそ野が広がっていく事だと思われます。


今後ともAndroidのコミュニティーを盛り上げる事で、きっとAndroidの開発者が広がり、将来にわたってアプリケーションやコンテンツの開発者にとっても、素晴らしい開発環境とAndroidはなり得ると思っています。


* 日本Androidの会

5400名を越える日本国内で最大のユーザコミュニティーで、地方支部も10拠点を越える。登録は無料で誰でも可能。詳細はhttp://www.android-group.jp/