日本Androidの会:世界で通用するAndroidアプリを日本から送り出し、エコシステムを回そう

2010年01月21日 12:48 by 福田智之
日本アンドロイドの会イベントリポート

日本アンドロイドの会イベントリポート

Android開発者のコミュニティ「日本Androidの会」新年最初の定例イベントが、2010年1月18日(月)に秋葉原で開催されました。終了後には引き続き新年会もあり、80名の定員を超える参加者が会場に押しかけて大盛況でした。

当日の登壇者2名は共に、「Androidなどオープン環境の端末の普及は、モバイルビジネスの活路を開き、それが世の中の役に立つ」ことをテーマに話を進めましたが、かたや「通信会社」の立場から、もう1人は「企業のコンサルティング」という職業から見た場合という、違う切り口の内容となりました。


いかに自分たちのエコシステムに引き込んでいくかが勝負


NTTドコモの栄藤稔氏。通信会社の立場から見たAndroidプラットフォームを、情報量豊かに解説

NTTドコモの栄藤稔氏。通信会社の立場から見たAndroidプラットフォームを、情報量豊かに解説

株式会社NTTドコモ サービス&ソリューション開発部長の栄藤稔氏は、iTunesの音楽ファイルの規格をMPEG4に決めたスペシャリストです。今回は「クラウドデバイス時代に対するオペレータの展望」と題した講演で、通信会社がAndroidなどの端末を、一般の開発者やコンテンツプロバイダー(以下:CP)に提供しつつ、一緒に肩を組んで進めるビジネスをどのように創り出すか、という内容でした。
しかし「今日は個人の立場としての発言で、NTTドコモの戦略を話するものではないし、知っていても話せない」と前置きされてのお話です。


1990年から2003年まで、携帯電話におけるCPU速度(上の矢印)と電池容量(下の矢印)の改善率グラフ

1990年から2003年まで、携帯電話におけるCPU速度(上の矢印)と電池容量(下の矢印)の改善率グラフ

インターネットをひとつの“雲”(=cloud)と捉えたとき、ネットワークで繋がったコンピュータ群は、ひとつの巨大なコンピュータにもなると考えられます。その繋がったリソースをユーザが利用することを“クラウド”といいます。

web2.0ではユーザのデータを多く集めることが「キラーアプリケーション」を生むと言われますが、ドコモの「iコンシェル」がまさにそれ。ケータイの中のヒツジが「データをお預かりします」と言った瞬間にクラウドコンピューティングが始まり、スケジューラーからリマインダ、羽田空港への乗換案内、フライトインフォメーションと、どんどん繋いでゆくのです。今後はセンサーでユーザデータを集めたアプリも登場するでしょう。

栄藤氏は「アドレス帳がグループで繋がって、流れを生み出すことも今後進む方向のひとつ」であり、「アプリケーションの連鎖ができると面白い。ドコモに限らずバックエンドのサーバを緩やかに共有できればいいなぁ…」と語ります。そしてそれを実現できるのが、オープンな環境であるグーグルのプラットフォームと言えるのでしょう。


コンシューマ、オペレーター、CPの間で、良い信頼関係の円を描くことが重要

コンシューマ、オペレーター、CPの間で、良い信頼関係の円を描くことが重要

栄藤氏はさらに個人の見解と断りつつも「性能向上のために、もっとCPU速度を高めたいが、電池容量とトレードオフになるのが残念」とのこと。電池の問題はモバイルデバイスの宿命とはいえ、驚異的に進化してきた携帯電話のスペックが多い中で、見劣りするのも事実。これが伸びれば、必ず新たなキラーアプリケーションが生まれるはず。今年にはドコモから、W-CDMAの次の規格である「LTE」の端末が発売される予定だが、今の3倍速くなる。Wi-Fiと体感的に変わらない感じ、と述べました。

課金については、ユーザ→通信会社→CPで円を描くようにするエコシステム(協調的活動)に間違いないが、「CPを育ててつつ、どのようにユーザに有益なコンテンツを提供していけるかがポイント」としました。通信会社の仕事は「ユーザを含むプレイヤーをいかに自分たちのエコシステムに引き込んで、共存共栄の輪を作るか」ということです。Androidのアプリで、日本だけでなく世界をマーケットに活躍する開発者が、グローバルなキラーアプリケーションを作ってもらえるか、Androidが伸びてゆくカギなので期待している。と栄藤氏は最後に語り、多くの参加者から拍手を浴びました。


情報を共有して、みんなでAndroidのエコシステムを回せ


熱く面白く、Androidの本命端末を語るデロイトトーマツコンサルティング株式会社の八子知礼氏

熱く面白く、Androidの本命端末を語るデロイトトーマツコンサルティング株式会社の八子知礼氏

続いてデロイトトーマツコンサルティング株式会社シニアマネージャーの八子知礼氏は、「モバイルクラウドの実像」と題し、Android端末の普及で予測されるモバイルビジネスの進化について講演しました。

クラウドコンピューティングはモバイル端末と相性が良く、Android端末をはじめ続々と登場するスマートフォンの普及により、クラウドのなかでも「モバイルクラウド」が急速に伸びるとされています。2008年に495億円だった国内クラウド市場は、2013年におよそ3倍の1,436億円になると予想され、モバイルクラウドの全盛期を迎えるだろうと八子氏は語りました。


国内クラウド市場の推移(2007-2013予測)。5年で約3倍の伸びが見込まれる

国内クラウド市場の推移(2007-2013予測)。5年で約3倍の伸びが見込まれる

その頃には、個々のワーキングスタイルにも変化が出ているだろうと同氏は予想。職場など一定の場所に縛られず、モバイルクラウドで仕事を進める「テレワーク」型の雇用形態が進むこと。また、ソフトバンク株式会社の孫正義社長が、「twitterは外脳のようだ」と語った新聞記事を取り上げ、ネットワークを通じて知を共有する社会に進んでいくモデルとして紹介しました。
誰と組むのか、何を協力し合うのか、どのように情報共有するのか、自社だけでビジネスをやる時代ではなく、「グループワーク」によるコラボレーションこそが生き残りのカギであると八子氏は述べました。

また、「ケータイとノートPC」の中間に、AndroidやiPhoneなどのフォンと名前のついたコンピュータが入ってきたように、今後もソフトウェアやハードをマッシュアップ(複合)して、新たな価値を持つサービスが生まれてくると力説。既存のどの領域をこわし、どう合わせるかがビジネスチャンスになります。「リアルとバーチャル」「家族と世間」「広告とコンテンツ」など、生活に根ざした、さまざまな組み合わせが考えられることでしょう。


既存の領域を壊し、混ざり合うところにチャンスがある。組み合わせ次第では大きな市場も狙える

既存の領域を壊し、混ざり合うところにチャンスがある。組み合わせ次第では大きな市場も狙える

そのときオープンなAndroidは、この豊富な資産を一番享受しやすい位置におり、この「エコシステム」を拡大することがAndroidの成功要因として重要と語りました。例えばiモード向けに作成されたアプリなど、いままで大量に作成されたコンテンツを、ほかのプラットホームでも活用することは行われていますが、今後は「ワンメークマルチユース」という形で展開されていくと予測。電子ブック用などの作品であっても、Android用に新たなテキスト類を追加する加工をすれば、個人であっても本格的なコンテンツを持つことが可能になります。ただし問題点は課金システム。オープンな環境でお金が回るシステムには工夫が必要との話でした。

八子氏は、近い将来に3インチから8インチ程度の大きさのディスプレイを持つ端末(デバイス)が中心になり、このサイズの端末こそがマルチユース化して、通信・メディア・ハイテクの領域を取り払うと考えています。例えば携帯電話は様々なリモコンとしても機能し、予約・設定・サービスが受けられるようになるイメージです。


ディスプレイを持つ家電製品なかで、クラウドデバイス時代に対応するのは、3~8インチのモバイル端末

ディスプレイを持つ家電製品なかで、クラウドデバイス時代に対応するのは、3~8インチのモバイル端末

最後に「日本Androidの会」の参加者や、Androidに興味を持つ一般の開発者にコメントをいただきました。「アマチュアでも小銭を稼げることは魅力ではあるが、それだけでは本格的なビジネスにはならない。大きなプレイヤーさんとのマッシュアップで、エコシステムを回す仕組みにしてもらいたい。その事例をつくり、ワークスタイルやビジネスがどう変わるか、Androidを開発しているエンジニアと一緒に、新たなビジネスをつくることを手伝えたらと思っています」と、詰め掛けたAndroidユーザや開発者にエールを送っていました。