ソニー・エリクソンが「Xperia」に残すソニースピリット

2010年02月08日 15:19 by 福田智之
スマートフォンは、電話であることを忘れてしまう。HT-03Aより電池の持ちが良くなり、連続待受/通話時間も伸びた。

スマートフォンは、電話であることを忘れてしまう。HT-03Aより電池の持ちが良くなり、連続待受/通話時間も伸びた。

ソニー・エリクソン(2001年10月以前はソニー)を製造元として発売したケータイ・PHSは、1991年のHP-211(DDIセルラー向け)を初めとすると、100機種を超えた。それはまた、新機能搭載の歴史でもある。4月にdocomoより発売が予定される「Xperia」に内包された、ソニースピリットを探ってみよう。



ソニ・エリケータイを始め、ソニー製の待受画面や壁紙には、なぜか紺色で波模様のものが多い。「SO902i」の待ち受け画面。

ソニ・エリケータイを始め、ソニー製の待受画面や壁紙には、なぜか紺色で波模様のものが多い。「SO902i」の待ち受け画面。

ソニーのケータイは、いつも新機能のトップランナー


ケータイのスペックは、メーカー各社の“1番乗り”と、それ以降の抜き差し合戦で進歩してきた。

その昔、小型化・軽量化競争を得意としたのは松下通信工業(現:パナソニック)や、京セラ。折りたたみ1号機(1991年4月)といえばNEC。iモード1号機で思い浮かぶのはF501iの富士通が挙げられる。カメラと液晶ではシャープカシオ計算機という強力なライバルもいる。しかしケータイが新たなステージを迎えるとき、斬新なギミック(仕掛け)を載せ、その先頭で旗を振っているのは、いつも“ソニー”だった。


ちょっとくどいかもしれないが、新機種発売のトピックを時系列で並べてみる。


  • 登録した電話番号の検索をスムーズに行える“ジョグダイヤル”は便利
    「TH251」(1995年6月)
  • オムロン製モバイルWnn(Wnn=”ウンヌ”)を日本語入力変換システムとして採用
    「C305S」(2000年2月)
  • 著作権保護されたATRAC3の音楽をメモリースティックで再生
    「C404S」「SO502iWM」(2000年12月)
  • 着せ替えパネルでファッション要素をプラス。“POBox”もこの機種から
    「C406S」(2000年12月)
  • 当時大流行した着メロの24和音化。未体験の迫力サウンドが鳴り響いた
    「SO503i」(2001年3月)
  • NTTドコモでのメガピクセルカメラ1号機で、回転式デザインが面白かった
    「SO505i」(2003年6月)
  • 大型液晶化の流れに逆行、わずか69グラムの超小型サイズに驚く
    「SO213i premini」(2004年7月)
  • おサイフケータイの1号機と言えば
    「SO506iC」(2004年7月)
  • 世界初のAMラジオチューナーが付いた
    「RADIDEN」(2005年10月)


どれもヒットした端末ばかりだ。懐かしく思い出すモデルが、いくつかあるだろう。


これら新機種の多くは、他のメーカーが追従しにくい独自の道(テクノロジー)を敢えて選んでいることが特徴だ。 残念ながら、ATRAC3の音楽データはMP3普及の影で姿をひそめ、24和音の着メロはiモードサイト上でほとんど流通しなかった。ビデオのベータマックス、メモリースティックの例を挙げるまでもなく、ソニーは独自規格へのこだわりが強く、そのため他のメーカーとの互換性が損なわれ、進化の袋小路に迷い込んで結果的に少数派の陣営となることもある。


しかし、俯瞰してみるとソニー・エリクソンが導入した独自技術の方向性は正しかったと思われる。ケータイ向けの「日本語入力変換システム」は発達し、音楽再生やおサイフ機能も、いまでは当たり前のものとして活用されている。ソニー製ケータイの遺伝子とは、単なるスペックの強化ではなく、ユーザの利便性を“いつの間にか”高める装置の開発にほかならない。時には先走りすぎても、後追いでは「ソニー」の冠で出す意味がない。古くは「トランジスタラジオ」や「ウォークマン」そして「Blu-ray」。「VAIO」「プレイステーション」も含め、ソニーの強いブランド力はこうして育まれた。


しかし、最近の端末では出しているのはソニーだがソニーらしさがない…。そんな感じのラインナップが続いた。日本国内では優秀でも、外国の機種から見れば独自規格ばかりの「ガラパゴス」ケータイと揶揄されたのも記憶に新しい。


そして2010年1月。「Xperia」はソニースピリットを取り戻すための、新しい旗なのかもしれない。



ソニーのAV機器でおなじみの「XMB(クロスメディアバー)」。十字方向にカーソルを動かすと楽しくて止まらなくなる。

ソニーのAV機器でおなじみの「XMB(クロスメディアバー)」。十字方向にカーソルを動かすと楽しくて止まらなくなる。

国産Androidのトップランナーがスタートする


Xperia」は、OSにAndroid1.6を搭載したスマートフォンだが、ソニー・エリクソン独自のコンテンツやサービスがふんだんに盛り込まれている。


Timescape」は、友人や家族との通話やメール、twitter、mixi、facebookのカキコミ、撮影した写真、聴いた音楽などXperiaの動作履歴を1本のタイムライン上に表示するツール。これを見ればユーザの「今日の行動」の流れを追うことが可能。「Mediascape」機能は、視聴した画像や動画を管理するアプリだが、「Infinity」ボタンを押すとネットにつながり、再生中のアーティストに関連する情報やミュージックビデオを「Xperia」内やWeb上から簡単に検索できる。


これらは「UXプラットフォーム」の上で動いているアプリで、ソニー・エリクソンによると、この「UX (User eXperience) 」は、「製品ポートフォリオ全体を通じて、新たな機能や性能を加えながら継続的に進化し続ける」UIだという。グラフィックに凝った表現や3D表示もでき、心地よい操作感があるらしい。そこで思い出したのが、ソニー製の液晶テレビ「BRAVIA」や「Blu-rayディスクレコーダー」、「PSP」などで採用されている「XMB(クロスメディアバー)」の存在。画面上にアイコンしか並ばないため、機能一覧として画面を見るとわかりづらいが、実際に「XMB」をリモコンで操作していると、その快適さで操作がつい止まらなくなる優れたインターフェースだ。


Android搭載のスマートフォンは他社からも発売されるが、「UXプラットフォーム」が見向きもされず、この機種が進化の袋小路に入り込むことは考えられない。おそらく他社も同様のインターフェイスを仕込んだ、統一感のある機種を開発してくるだろう。
ソニーの遺伝子は、自社の独自規格にこだわり続けることではない。ライバル社にも影響を与え、自身の技術力でもう1段上のステージに挑戦する「ソニースピリット」が内包されているはずだ。



ソニー・エリクソン 商品企画部長 大澤斉氏は「今後もスマートフォンの開発を続けるので、期待して待っていてほしい」と述べた。

ソニー・エリクソン 商品企画部長 大澤斉氏は「今後もスマートフォンの開発を続けるので、期待して待っていてほしい」と述べた。

以前からのSOユーザを、そのままスマートフォンに移したい


ケータイの機種変更をするときは、今まで使っていたキャリア(電話会社)と機種のメーカーを同じものにすれば、移行の手間やトラブルが少ない。いわゆる2年縛りが常態化しているため、NTTドコモから発売された「SO905i」(2007年11月)、「SO905iCS」「SO705i」(2008年2月)。キャリアを飛び越えてauの「W53S」(2007年10月)、「W54S」(2008年2月)の買い替えタイミングに4月発売の「Xperia」はちょうどいい。


ソニー・エリクソンモバイルコミュニケーションズ株式会社 商品企画部長 大澤斉氏は、「弊社のケータイをご使用いただいたお客様に引き続き使っていただくため、『POBox Touch 1.0』や、カメラの仕様などで従来の機種の特長を残してあります。もちろん、新たなお客様にもお楽しみいただけます」と述べた。


さらに「今後もAndroidを搭載したスマートフォンの発売の予定はあります。具体的な機種やスケジュールは未定ですが、弊社としてはこれからも、お客様の声にお答えして出していく、ということです」とし、後続機の投入も示唆された。


Androidを搭載する国内メーカーの参入もまだ少なく、ソニー・エリクソンは予定が先走っていないか少し心配だ。しかし、ソニーの創業者であり、日本を代表する国際派経営者の盛田昭夫氏(1921~1999)は、著書の「Made In Japan」(朝日新聞出版)で、ソニーのもの作りの考え方について述べている。



「Nexus One」「Xperia」「HT-03A」「iPhone」…注目のスマートフォン勢ぞろい。

「Nexus One」「Xperia」「HT-03A」「iPhone」…注目のスマートフォン勢ぞろい。

“開拓者”であり続けることが「ソニースピリット」


「われわれのビジネスに対する基本的態度は、何か新しいテクノロジーを開発したら、とにかくすぐに、それで何か作りたいと考えるところにある。発明や発見は、ただ感心したり、それを学問上の成果とだけ考えて終わってしまったら、それは誰にも利益をもたらさない」


盛田氏の考え方が「Xperia」に息づいているのなら、Androidというテクノロジーはただの新しいプラットフォームではなく、ビジネスとして魅力的と見えたから、この機種が生まれたに違いない。
ほかのメーカーの動向など気にせず、お客様に喜んでもらって、それがビジネスになれば…、そんな気持ちでモノ作りをすることが、「ソニースピリット」なのだ。


盛田氏は前述の著書で、「我社のポリシーは消費者がどんな製品を望んでいるか調査して、それに合わせて製品を作るのではなく、新しい製品を作ることによって彼らをリードすることにあり、だから我々は市場調査などにあまり労力を費やさず、新しい製品とその用途について、あらゆる可能性を検討し、消費者とのコミュニケーションを通じて、そのことを教え、市場を開拓していく」と記している。


この完成度の高いスマートフォンの中で、「ソニーは開拓者」というポリシーは大事に保管され、実行されているようだ。そして「Xperia」こそが、ソニー・エリクソン社発売のケータイの系譜を受け継ぐ機種であると、強く感じた。



【記事修正のお詫び:2010/2/15】
記事内に掲載した写真のお名前に誤記がありました。以下の通り修正させていただくとともに、お詫び申し上げます。
(誤)ソニー・エリクソンモバイルコミュニケーションズ株式会社 マーケティング部 桑田大介氏
(正)ソニー・エリクソンモバイルコミュニケーションズ株式会社 商品企画部長 大澤斉氏