“Gadget1”で見つけた、Android向けお遊びテクノロジー:後篇

2010年03月03日 16:05 by 福田智之
後篇は「未来を感じるガジェット」が続々登場。

後篇は「未来を感じるガジェット」が続々登場。

2月6日(土)、東京のオラクル青山センターにおいて開催された、「Gadget1(ガジェットワン)」イベントレポート後篇をお送りします。前篇は企業などがサービスの一環として使用するガジェット類の紹介。中篇では個人や社会人サークルが、「こんなもの作っちゃいました」という、ノリノリの作品を数多くお伝えしました。後篇は題して「未来を感じる新兵器ガジェット」。面白メカや素敵な開発ストーリーが、今回も盛りだくさんです。


観客が“ノッテル”状態を会場に反映したい


ライトニングトーク3番目のプレゼンは「チームラボボール直径1.5メートルの空飛ぶガジェット」と題し、高須正和氏(チームラボ株式会社)が登壇しました。


チームラボでは、直径1.5メートルの球体にセンサーと無線を内蔵し、ヘリウムガスを充填して風船のように浮かせたバルーンを作成しました。このぽよよんとした物体を、ライブ会場などのフロアに投げ込み、観客の頭上で弾ませます。ゆっくりと上昇・降下を繰り返しますが、観客のタッチリアクションがあるたびに、内蔵LEDが赤青緑白紫と何色にも変化します。その色は会場照明と他のバルーンにもリンクしていて「自分が会場照明を操作しているようで楽しい!」と思える、“空飛ぶ”ガジェットです。


バルーンとコンピューターのメディアアートを行っている、東京大学の吉本英樹さんとのコラボレーションで開発が進みました。実験場所探しにも苦心しましたが、「東大の宇宙工学研究室の前なら文句も言われなさそう」と思い、ここで実験したそうです。30メートルぐらいの高さまで軽く飛んでしまうので、怪しげな飛行物体と誤認されないように注意したとか。


バルーンにヘリウムガスを充填すると、少しのチカラで空高く舞い上がってしまう

バルーンにヘリウムガスを充填すると、少しのチカラで空高く舞い上がってしまう


バルーンは、東京の戸越銀座にあるオーダーメイドでバルーンを作る会社に発注し、7個作成しました。バルーン1個あたり150mAの高輝度LEDが32本、単3オキシライド電池を8本内蔵していますが、秋月電子通商の高輝度LEDの在庫を一発で枯渇させてしまい、足らない分は海外から取り寄せるという手間と時間がかかっています。


観客のタッチリアクションにより、赤青緑に発光するバルーン。ガジェットが人を動かした瞬間

観客のタッチリアクションにより、赤青緑に発光するバルーン。ガジェットが人を動かした瞬間

できあがったこのガジェットは、2009年大晦日に幕張メッセで行われた、ロッキング・オン主催のカウントダウンライブ「COUNTDOWN JAPAN 09/10」で実戦投入されました。「バルーン準備中のダンスフロアは観客がまばらでしたが、投入したとたん、湧いてくるように人が急増。一気にフロアの密度が高まりました。会場の隅で傍観していた人もフロアに出て参加してくれたという感じで、ガジェットで人が動いた瞬間を目撃しました」と高須氏。


他のバルーンや会場照明と同期し、次々と色が変わりますが、5個、6個と投入すると変化し過ぎるので、連動を切ることもできます。バルーンが増えると、オーディエンスの熱狂度もup!結果、4日間で観客20万人を迎えたイベントになり、ロッキング・オンジャパンの公式HPにも「今年のDJ BOOTHの新兵器!」として取り上げられて、大好評でした。


「gadget1」の会場に実物は持ち込めないので、当日はビデオでのプレゼンになりましたが、それでも迫力十分!キラキラ輝く虹のようなバルーンの出現に、参加者は「おおっ」と引きつけられていました。ヘリウムガスは高価なので、やたらとバルーンに充填できませんが、空気で膨らませば、床に転がしておけます。その際シリアル接続をすればMIDIなどのデータに反応して、音楽で点滅させることもでき、ライブや発表会などで活用できそうです。


「チームラボは、テクノロジーで人の心を動かしたり、売上を上げたりする仕組みを作る会社です。出番待ってます!」と高須氏。今後は「信号・標識の類や、もっと大きな照明・ディスプレイを便利で楽しいものにしたい」と考えています。「ご家庭の中でも、Androidの普及で家電がコントロールできるようになると、面白いことが実現できそう」とか。室内の照明が赤・青・緑と変化するノリノリの一般家庭が現れたり、世の中を明るく変えるような楽しいガジェットが出てくるかもしれません。



ニセジョブズの基調講演で紹介された、画期的な新製品とは


「iPhoneと、ノートブックの間に、大きな市場があるはずだが・・・」という英語のセリフは、2010年1月27日頃に、ネット上で聴いたことのある発言ですよね。アップル社のCEO、スティーブジョブズ氏の新製品発表の登壇を思い出します。

『iPad』の発表時に見たようなプレゼン画面。こんな商品ってあったっけ?

『iPad』の発表時に見たようなプレゼン画面。こんな商品ってあったっけ?


「iPad?いえいえジョブズ、僕たちが待っていたのは、その程度の商品じゃありませんよ。だってiPadは、所詮シングルタスクではないですか。僕たちはマルチタスクで、画面が9インチを超えるぐらいに大きくて軽く、そして安い製品を待っているのです。そこで僕たちの夢をかなえた素晴らしい商品、『iBag』を紹介します」


続いてのプレゼンは、akio0911氏 (Hacker’s Cafe)のこんな言葉ではじまりました。


akio0911氏が持つ鞄は「モバイルデジタルサイネージバッグ for iPhone」という名称で発売中

akio0911氏が持つ鞄は「モバイルデジタルサイネージバッグ for iPhone」という名称で発売中

「このiBagの特長は、3つのタスクが重ならないように作業できることです。Webブラウジングのほか、eメール、写真、ビデオ撮影、音楽、ゲームがマルチタスクでできます。ゲームをしながら、Twitterしながら、言葉の意味も調べられます・・・。どういう製品か、ご覧ください」と、開発したakio0911氏は鞄をかかげます。


銀色に輝く「iBag」登場。会場大爆笑!!一見、塩ビ製の安いバッグですが、実は本物の牛革を使用しているのだとか。横面に、iPhone/iPod touchがちょうど収まるポケットが3つ並んで付いています。透明のビニールポケットは薄く素通しで、液晶がそのまま操作可能です。


ノートPCよりも速く作業環境を用意できます。デジタルサイネージ(電子看板)にも最適

ノートPCよりも速く作業環境を用意できます。デジタルサイネージ(電子看板)にも最適

「電車で座席に座ったとたん、『iBag』を膝の上に置いたら、そこが作業環境になります。素晴らしいのは縦画面でも横画面でもすぐに切り替わって使えること。加速度センサが3つ内蔵されていますから、バッグの向きを変えるだけです。非常にアメージング(驚き)でインクレディブル(信じられない)な商品ができたと自負しています」


ジョブズと似たシャツを着て行われた、素晴らしいニセKeynote(基調講演)。Webエンジニア、iPhoneアプリ開発者でもあるakio0911氏は、自ら開発したiPhoneアプリを、デモしながら歩けるバッグが欲しかったとか。

実はこの商品は「モバイルデジタルサイネージバッグ for iPhone」といい、彼が自分でバッグメーカーに企画を持ち込み、本当に買えるネット上の通販商品として生産されました。製作を担当したバッグメーカー「Favori」には、かなり苦労をかけたそうですが、上質なバッグとして実用性を残したまま、とてもユニークな仕上がりになっています。


バッグは15インチのMacBook Proにも対応していて、中に格納することも可能。ちなみにサイズは横39cm×縦27cm×マチ5cm。色はシルバー、ゴールド、ブロンズの3色。手持ちと斜めがけの2WAY仕様。apple向きだけではなく、ぜひAndroid向けのバッグも開発して欲しいものです。



すべての人がデジタルで幸せな写真を持つ時代になる


新橋の漫画喫茶のマッサージチェアに実装されていた「そこもっと」ボタンに感動した川井拓也氏

新橋の漫画喫茶のマッサージチェアに実装されていた「そこもっと」ボタンに感動した川井拓也氏

続いては、無宗派世代の先祖供養「ジェネレーションフォトフレーム」と題し、川井拓也氏(株式会社ヒマナイヌ代表取締役)の登壇です。デジタルハリウッド大学院アンビエントメディアラボとのコラボレーションで生まれたガジェットは、デジタルフォトフレームです。「なんだぁ、すでに流行しているし、最近はケータイ各社が販売に力を入れていて、珍しくないよ」と思うかもしれません。


しかし川井氏は「アンビエント(環境)メディア → 操作してないのに動作する。しかも“インテリジェント”に。という定義を持つフォトフレームを我々は作りました」と言います。つまりユーザーの操作なしに、ネット上のクラウドサービスで保存された思い出の写真が、このフレームで自然に表示されるというのです。


襖や障子のように、小さなパネルが立ったまま前後3列に並んでいます。一番手前に自分、その奥2枚に両親、3列目が祖父母の写真を表示するディスプレイで、フレーム部にはWi-Fiアンテナが内蔵されていて、いつでも呼び出すことができます。一度生年月日などを入れておけば、誕生日や記念日にはフォトフレームが自動的に計算して、クラウドサービスに保存した昔の画像をセレクトし、祝ってくれるのです。


3世代をフォトフレームに映すと、両親への感謝の気持ちや容姿の変遷など気づくことがあるはず

3世代をフォトフレームに映すと、両親への感謝の気持ちや容姿の変遷など気づくことがあるはず


例えば私が30歳の誕生日だったとします。保存されている画像から、母と祖母が30才だったときの写真を自動的に検索し、3人横並びで表示。「おばあちゃんと母と私」の同じ年の顔は似ているね、などの会話のキッカケを、このフォトフレームは作り出すのです。これは仏壇レス世代が先祖を身近に供養するためのガジェットでもあるのだとか。ここまでギャグ満載のガジェットが続いていたので、急にしんみりしました。タイトルに先祖供養と付いていますが、家族の生い立ちをフォトフレームでたどり、絆を深めるアイデアは素晴らしく、“親孝行ガジェット”と言えるのではないでしょうか。


ただし、デジタルで記念写真を残す世の中になって、まだ10年も経ちません。昔の紙焼き写真をスキャナで取り込んで、デジタル化しない限り、この「ジェネレーションフォトフレーム」が真価を発揮するまでには、まだあと50年ぐらいかかるかもしれません。



「ココなう!」と叫ぶには、まだ詳細な妄想が足りません


ウィルコムのPHSで使用するW-SIMカードを、GPSアンテナにするアイデアを発表した永山純一氏

ウィルコムのPHSで使用するW-SIMカードを、GPSアンテナにするアイデアを発表した永山純一氏

続いて永山純一氏(有限会社キャップ)による「ココなうとつぶやきたい」という題のプレゼンです。



「羽田空港なう!」「新大阪駅なう!」「バンクーバーなう!」と、自分の居場所をつぶやきたいことがあります。犬の散歩中のマーキングのような気持ちで、「自分は今ココにいる」ことを記録として残しておきたいという衝動です。


Android端末やiPhoneにもGPSは内蔵されているので、いまいる場所を地図で特定して投稿するぐらいのことはできます。しかしアプリの立ち上げやGPSの捕捉に意外と時間がかかるのが実情。できればボタンをポチっと押しただけで、その場所や施設を解析しつつTwitterに投稿する、単機能のガジェットができたらいいな、という内容でした。残念ながら今回はアイデアレベルの話だったので、検証できるガジェットは登場しません。しかしプレゼンの資料を見ているだけでも雰囲気が伝わってきます。


ワンボタンで「ココなう」とtwitterにアップ。行動履歴を残せば、無駄な時間を減らせるかも

ワンボタンで「ココなう」とTwitterにアップ。行動履歴を残せば、無駄な時間を減らせるかも

肝心の通信モジュールには、ウィルコムの発売するPHS機種に差す「W-SIM」というSIMカードを使います。「W-SIM」は独立した通信モジュールで、筐体の部分は自由に開発することが可能です。GPS機能も内蔵しており、さらに全国16万か所の基地局にも接続するので、キメの細かな位置情報の取得ができるスグレモノ。中篇でご紹介したhimamura氏の「オープンハードでこんなガジェット欲しくね~?」と同じ発想で、難しいアンテナ周辺は、この「W-SIM」に任せてしまうというアイデアです。

そこで永山氏は「便利なW-SIMは手持ちのものを活用します。みなさんのご家庭にも使っていない『W-SIMカード』ぐらい転がっていますよね?」と、また中篇の「オシロスコープもみっくみく・・・」(ぱお氏)で聞いたフレーズの使い回しで笑わせます。「ないないない」と首を横にプルプル振る人が多い中、永山氏は話を進めます。



「販売価格は2,980円を予定しています。GPSの測位モジュールだけでも2,980円では買えませんが、『W-SIM』を利用すれば安くできそうです。しかしW-SIMのGPSアンテナと地図ソフトを連携させて場所を割り出すことは、現状では郵便番号などから住所を捜す方法のため、細かい番地や施設名に直すのが難しいです。つまり『東京都港区南青山3丁目なう』と言われても、どこにいるかわかりません。これを『オラクル青山センターなう』にまで持っていく“妄想”が必要。またポチッと押すボタンの仕様も決まっておらず、まだまだ“詳細な妄想”も必要です」と、永山氏。実用化は先のことになりそうです。


“詳細な妄想”・・・って、どんな意味なのでしょうか。そういえば「オシロスコープもみっくみく・・・」で、ぱお氏がガジェット製作の方法を総括したとき、こんな発言がありました。

『妄想します』といえば → 仕様を決定すること

『詳細な妄想をします』といえば → 各部の決定を行うこと

どうやらここから引用しているようです。ガジェット制作に何より必要なものは『妄想』だということでしょう。「ココなう!」の実用化にあたって、永山氏は、ぱお氏と組み、詳細な妄想を展開すれば開発が進むと感じました。



Androidが動くボードの手作りに挑戦


永井秀和氏は、CADもLinuxもわからないところから始め、製品化するところまで頑張りました

永井秀和氏は、CADもLinuxもわからないところから始め、製品化するところまで頑張りました

イベントの最後は「Androidがサクサク動くボードを作ってみました」と題した、永井秀和氏(丸文株式会社)の登壇です。


永井氏は半導体などの部品を扱う商社で働いています。会社の応援もありましたが、趣味も兼ねてAndroidが動くボードの自作に挑戦し、構想半年、製作1年で見事完成にいたりました。もともとCADが引けず、Linuxもよくわからない状況からのスタートでしたが、「最近はネット上に情報があり、調べたらどうにかなるものです」と述べ、頑張ればなんとかなると語りました。


M2ID(丸文株式会社)は、大型ディスプレイを持つアプリケーション開発用ボード

M2ID(丸文株式会社)は、大型ディスプレイを持つアプリケーション開発用ボード

そのボードは、モバイル用アプリケーション開発環境「M2ID(エムツーアイディ)」として丸文株式会社から発売することになったそうです。部品が足らない状況ですが、 3~4月ぐらいには出荷できる予定とか。ARM CortexA8 800MHzのプロセッサを搭載しており、評価用のリファレンスボードとしてソフト開発者の作業の役に立ちそうです。


さて、後篇の「未来を感じる新兵器ガジェット」のご紹介はここまでなのですが、実はライトニングトークでは、実際に開発されたガジェットの紹介以外にも、ガジェットにまつわる有意義で興味深い内容のプレゼンをたくさん聴くことができました。それらを「番外篇」としてまとめたものを、次回、イベントレポート本当に最後の記事としてお届けします。


~番外篇へ続く~


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