“Gadget1”で見つけた、Android向けお遊びテクノロジー:番外篇

2010年03月04日 16:22 by 福田智之
ライトニングトークでは、実際に開発されたガジェットの紹介以外にも、興味深いテーマが満載だった

ライトニングトークでは、実際に開発されたガジェットの紹介以外にも、興味深いテーマが満載だった

2月6日(土)、東京のオラクル青山センターにおいて開催された、「Gadget1(ガジェットワン)」。前回まで前篇中篇後篇とイベントレポートをお届けしてきました。企業などがサービスの一環として使用するガジェット類の紹介、個人や社会人サークルが、「こんなもの作っちゃいました」というノリノリの作品、そして「未来を感じる新兵器ガジェット」。様々なガジェットを数多くお伝えしてきましたが、最後に番外篇として、ガジェットにまつわる有意義で興味深い内容のプレゼンをまとめてお伝えします。


シリコンバレー流 ガジェット開発の現場


「Eye-Fiカード」を製作、発売するアイファイジャパン株式会社の田中大祐氏。人材募集を行った

「Eye-Fiカード」を製作、発売するアイファイジャパン株式会社の田中大祐氏。人材募集を行った

田中大祐氏は、自ら代表取締役を務める「アイファイジャパン株式会社」の紹介と、人材募集を行いました。こちらの会社は、SDメモリーカードにWi-Fi機能を付加した、デジタルカメラ専用SD型無線LANカード「Eye-Fiカード」を製作、発売しています。


米国シリコンバレーにある本社はガレージのようなところで、看板は紙で印刷しただけの非常に小さな場所だといいます。週に1回は自分の机ではなく、公民館の会議室などを借り、ノートPCで仕事をするノマド(遊牧民)スタイル。オフィスには犬や魚がいますが、大きな会議室はありません。全社ミーティングは少し広いスペースに集まって、ビデオなどを見ておしゃべりしながら自由な雰囲気で行われます。


自分よりスゴイと思える人のみ入社を認めると、採れば採るほど社内エンジニアのレベルが上がる

自分よりスゴイと思える人のみ入社を認めると、採れば採るほど社内エンジニアのレベルが上がる


採用の面接時にはとても長いインタビューが行われ、その際に「自分はこれができるからやるではなく、ユーザーがこれを求めているからやる」と言える人しか合格しません。社員の知り合いが入社したい場合は「自分(社員)から見てリスペクトできる人しか採用しない」という基準があります。つまり採れば採るほど社内エンジニアのレベルがあがるということになるのです。


米国本社の社員は合計17の国籍を持つ30名、そのうちエンジニアは10名、みな日本が大好きな人ばかりだそうです。徹底した既存技術の活用と、ユーザー志向を武器に新たな商品開発の準備を進めています。シリコンバレーにある本社では、いまカメラに詳しい日本のエンジニアを求めているそうなので、興味のある方は、まずメール等で米国本社に連絡してみてはいかがでしょう。



たまに行くならこんな店!“詳細な妄想”で味わう回路設計カフェ


すすたわり氏が茨城県つくば市にオープンさせる予定の「FPGAカフェ」で扱うものは何?

すすたわり氏が茨城県つくば市にオープンさせる予定の「FPGAカフェ」で扱うものは何?

すすたわり氏(SUSUBOX Project)は、大変印象深いプレゼンスタイルを用いて登壇しました。題して「たまに行くならこんな店」。すすたわり氏の調子に合わせてお送りすると、こんなかんじになります。


本日の「たまに行くならこんな店」は、茨城県つくば市からお届けします。すすたわり氏がオーナーシェフをつとめる注目の味な店「FPGA-CAFE」は、ただいま開店準備中です(4月ごろ開店予定)。その店は筑波大学の南側に隣接した文教地区にあります。周辺には飲み屋や怪しいビデオレンタル店なども多く、とっても楽しげな環境ですね。


以前はライブハウスだった(?)場所を、すすたわり氏自らが修理を施し、広々としたお店のスペースにしました。ペンキ、漆喰、モルタルを塗るのがすっかり上手になり、さらに電気工事士の資格まで取ってしまったという凄腕シェフです。


開店前ですが、お店をちょっと訪問してみましょう。ドアを開けると、客席向かいあわせのカウンターに、店員らしき白衣を着た怪しい男性がいます。「いらっしゃいませ~。何にいたしましょう?」と、メニューが出てきます。


怪しいオーダーシステムだが、部品がそろえば30分でお持ち帰りのガジェットが完成する

怪しいオーダーシステムだが、部品がそろえば30分でお持ち帰りのガジェットが完成する


MENU

  • XC6VLX760-2FF1760   時価(※)
  • XC6SLX16-2CSG324CES 4,200円
  • XC5VLX110-1FFG676C 151,300円
  • XC3S1400AN-5FGG676C 11,800円
  • XC3S250E-4TQ144C   2,600円

※ =(軽トラックが2台買えそうな金額)


「ご一緒に、ほかの半導体はいかがですか?」と、ファーストフード店のように訊かれますが、無視して構いません。用意してきた“詳細な妄想”を伝え、オーダーしてください。


この店の自慢の一品は、自家製の「ワンチップ・コンピュータ」です。高速処理、コンパクト、低電力消費に優れたおいしいLSIを、イキのいいまま、すすたわり氏ら一流のFPGAシェフが料理してくれます。新鮮なまま味わうため、注文が入ってからの調理となります。手際よく焼きが入った半田付け、珍味な部品などを味わえる、そんな素敵なお店です。つくば方面に旅行の際は、ぜひ立ち寄ってみたいですね。


冗談はここまで、本当は客から注文されたガジェットを組み立て、販売する店です。FPGA-CAFEでは、「こんなガジェットが欲しい」というお客様の要望を受け、その場で設計します。部品が揃えばそこから組み立てを開始し、時間にして30分程度で「へぃっ!お待ち」と、寿司屋や屋台で頼んだかのように実装までしてくれます。同人ハードウェアの委託販売も可能。ご注文いただいた方には、コーヒー、紅茶をサービス。冗談のようですが、8割本気だそうです。


FPGAとは、「Field Programmable Gate Array」の略で、プログラミングのできるLSIの名称です。自由度が高いことから次世代デバイスとして期待されていて、もちろんAndroidを用いたガジェット作りにも適しています。この店は、要はFPGA好きの人の集会所で、以下の方針があります。


・当店は、お客様のニーズに応じたガジェットを、その場で組み立て販売します。

・お客様の開発されたガジェットの委託販売を行います。

・当店の規約に従い、オープン・ソース・ハードウェアの開発に参画頂ける場合は、製造装置や測定機器などを無償でご利用いただけます。


このFPGA-CAFEは、システム・回路設計エンジニアが集い、交流するサロンとして、大いに活躍する場となるでしょう。前半の展開は冗談でしたが、この店の味を楽しみに、本当に遠方からお客さんが訪ねてくるような店になるかもしれません。



2010年、encafeのキャッチコピーは「作ってつながる」


「encafe」と「P板.com」の合同プレゼンだった。どちらも技術者とって大事な情報になる

「encafe」と「P板.com」の合同プレゼンだった。どちらも技術者とって大事な情報になる

続いては、encafe(エンカフェ)代表取締役の吉弘辰明氏。「encafe高円寺」は、セミナー施設である高円寺プラットフォームワークショップ内の1Fにある、カフェスペースの愛称です。また2006年1月にスタートした、エンジニアに特化した国内初のSNS「encafe SNS」としても活動中。


ここは別名「ガジェットカフェ」と呼ばれるほど、ガジェット好きの人が集まり、情報交換が活発に行われています。そもそも本日は「gadget1」に合流するまで、「encafe」独自開催イベントの予定がありました。


一般的に、パソコンで使うソフトはある程度決まっています。さらに自作マニアでもない限り、パソコンのハードまでカスタマイズして楽しむ人は多くありません。しかしAndroid/iPhoneの登場で、ソフト(アプリ)も多くの中からユーザーが選択し、使いやすくカスタマイズする時代になってきました。さらにハードも気軽に組み立てられる世の中になることを目標に、「encafe」は活動しています。「ハード制作者のつながりを作りたい」ということで、スペースの開放を行い、現在は「高円寺UStreamスタジオ」の開設を目指しています。ネットコラボレーション型次世代技術コンテスト「Engineer Award」の運営や「作ってつながる」ための仕掛けなどに、興味ある方はお気軽にご参加ください。


「encafe」のHP。cafeという単語は16進数で表せるためか、電子工作好き人に馴染みやすい

「encafe」のHP。cafeという単語は16進数で表せるためか、電子工作好き人に馴染みやすい


そして、「P板.com」(株式会社インフロー)の紹介がありました。プリント基板の設計・製造を国内初のネット通販で始めた会社です。価格破壊を起こし業界でにらまれているとか。安くプリント基板を作成するためには、海外の工場に相見積もりを取ったりするのですが、時間がかかったり、なにかと大変です。そこを「P板.com」はお手伝いしますよ、というサービスです。3月からは自前で部品の調達も始めるので、より安くスピーディーにプリント基板を作成できるようになるそうです。「お客様は空いた手間や時間を“詳細な妄想”に使ってください」とのことでした。


プレゼンが終わり、前篇に登場した安生氏から「エンジニアは cafe という言葉が好きですね。 16進数で表せるからですかね?」という突っ込みがあり、会場は笑いと拍手に包まれました。



「gadget1」がつないだ技術者たちのネットワーク


登壇時間が8時間、のべ19名に及んだ「gadget1」は、今までになかった大変濃い内容をTwitterなどのネット上や参加者の記憶に残してお開きになりました。この日発表された内容には、ギャグ要素も多分に含まれていますが、近いうちにきっと世の中の役に立ち、笑いと技術力で世界を明るく変えそうな、希望が持てる“夢のガジェット”だったと思います。


ピザパーティの乾杯で懇親会スタート。「gadget2」「gadget3」と続きますように…

ピザパーティの乾杯で懇親会スタート。「gadget2」「gadget3」と続きますように・・・


会場の隣の部屋を使い、懇親会のピザパーティが催されました。長かった一日を振り返りつつ、多くの参加者たちが集まってきます。青山にある日本オラクル13階からの眺望は大変美しく、参加者は飲み物を片手に気持ちよさそうに懇談しています。


日本オラクルの山口和洋氏。家電はAndroidなどを通して、ネットワークにつながるべきと述べた

日本オラクルの山口和洋氏。家電はAndroidなどを通して、ネットワークにつながるべきと述べた

この素晴らしい会場をご提供いただいた、日本オラクル株式会社の山口和洋氏に、今後のガジェット界と Androidについて語っていただきました。山口氏は「Oracle Technology Network (OTN) Japan」のシスオペとしても有名な方です。


「日本オラクルでは、OSの枠を超えて『つながる技術』を提供していきたいと考えます。すでに数千もの製品数がある弊社では、広く使ってもらえる汎用システムこそが柱です。例えばJavaは、プラットフォーム非依存性や高い移植性、互換性のような優れた技術を使って、便利な世の中を実現するお手伝いをしています」と述べました。


山口氏は個人の発言として、「私も、情報家電を含めて、つながるものはすべてネットワークにつながるべきと考えます。ただ単につながればいいということではなく、そうすることによって、セキュリティを含めたソーシャルビジネスとして、安心安全な暮らしを実現できるからです」と続けました。さらに「その接続端末として、今日発表されたさまざまなガジェットが役に立つことと思います。もちろんAndroidはその端末に組み込まれるシステムとして、重要な位置を占めることは言うまでもありません」と述べ、山口氏はAndroidを用いた生活家電で、世の中の仕組みをスマートなものにしたいと、夢を語りました。


生活そのものがネットワークでつながる・・・」この話を伺ったすぐ横のテーブルでは、中篇で登場した「秋月ドランク」を使い、ビールを飲んだ参加者が「へべれけなう」の実証実験を行っていました。


名古屋から来場した塚田氏。東京タワーの夜景を見ながら、きょうの長い一日を振り返る

名古屋から来場した塚田氏。東京タワーの夜景を見ながら、きょうの長い一日を振り返る

FeelSketch」の塚田氏は、名古屋から朝一番の新幹線で上京。長い一日になっています。


「僕はFeelSketchを、キチンと世に出したいと思います。AR技術はいまのところお金につながっていないけれど、『プレミア感』のあるエアタグをつけることで、何かの形にできないかと考えています」と述べ、広告などで利用価値のある方法を模索していることを語っていました。


そういえば、塚田氏の「PC とプリンタとAndroidは、いま絶対にご家庭にあるものですよね!」という発言は、ぱお氏の「普通の一般家庭ならオシロスコープぐらい転がっているよね」に繋がり、「ライトニングトーク」で各登壇者がそのパターンを踏襲しまくりました。後篇で再三登場した「詳細な妄想をします」とあわせ、今回の「gadget1」では、前の人のネタをうまく取り込んで自分の表現としていたプレゼンの実に多かったこと!しかし結果的に、それがよりよいプレゼンとなったことは言うまでもありません。言葉さえもオープンソースとしてしまう登壇者、恐るべしということでしょう。


中篇の「オープンハードでこんなガジェット欲しくね~?」で登壇した今村氏は、「いまのAndroidは、LINUXが伸ばしてきた90年代後半の流れに似ているところがあって、これからどんな花を咲かせるのか本当に楽しみだ」と述べ、「Androidはいろいろなハードに載るので、テレビ、ラジオだって、さらにもっとスゴイものだって作れる。誰かが本当にそれをやることが必要」と力説しました。“Android界のヒーローの出現”は、まだこれからかもしれません。


前篇に登場した、日本Androidの会理事の安生氏は、「Android端末を使うと、物が動いて、ココロも動く、そんな生活に密着したシステムになりたい」と語りました。情報端末だけではなく、将来は家庭内の電気で動くものの多くに Androidが入り、ホームオートメーションが実現されるのでしょう。数年後、「ジャパニーズモダンネットガジェット」として世界を驚かせることになる、日本発のテクノロジーは、この「gadget1」というイベントがキッカケだった・・・と振り返ることになるのかもしれません。


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