携帯電話業界のキーマンが大討論! SIMロック討論会「SIM LOCK in JAPAN 2010 vol.2」

2010年04月22日 16:00 by ノダタケオ
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「SIM LOCK in JAPAN vol.2」

「SIM LOCK in JAPAN vol.2」

総務省による携帯電話のSIMロック解除の動きが進む中、4月16日(金)、SIMロック討論会「SIM LOCK in JAPAN 2010 vol.2」に携帯電話業界のキーマンが集まり、Ustreamとニコニコ生放送で中継された。この動きに対して「SIMロック解除をする前に、周波数と方式の統一を」という声が改めて挙がった。


SIM LOCK in JAPAN vol.2」開催概要

<主催>

石川温(ケイタイジャーナリスト)、三上洋(テクニカルライター)

<出演>

夏野剛(慶應義塾大学 政策・メディア研究科特別招聘教授)

松本徹三(ソフトバンクモバイル 副社長)

福田尚久 (日本通信 代表取締役専務)

<司会>

菊池隆裕(日経BP社)


SIMロックの解除には、様々な問題がある


ケータイジャーナリストの石川温氏

ケータイジャーナリストの石川温氏

始めに、ケータイジャーナリストの石川温氏が以下のように、今回の討論会の主旨を紹介した。


「3Gの携帯電話端末は自社(キャリア=携帯電話会社)でしか使えないように制限するSIMロックというものがかけられている。現在、総務省はユーザが携帯電話会社を乗り換えることができるようSIMロックを解除しましょう、という話を進めている。しかし、様々な問題があり簡単にできない、という意見も一方にある。今日は携帯電話業界で活用していた方、いる方、携帯電話業界に新しく参入した方をお迎えし、現場の方にいろんな話をお伺いして、この問題をどうしたら良いかを話し合っていきたい」


司会の菊池隆裕氏(日経BP社)

司会の菊池隆裕氏(日経BP社)

そして、「SIM LOCK in JAPAN 2010 vol.1」に引き続き、菊池隆裕氏(日経BP社)が司会進行を務め、「総務省は4月2日(金)に関連団体などを集めた公開ヒアリングを行ったが、物足りないと感じている。今日は、公開ヒアリングの延長戦であり、お越し頂いた皆さんの意見を更に伺いながら改めて議論を行いたい」と、各人の意見を聞いた。


SIMロック解除をする前に、周波数と方式の統一を


福田尚久氏(日本通信)

福田尚久氏(日本通信)

日本通信代表取締役専務の福田尚久氏は「今日はSIMロック解除の賛成派の立場ですが、インターネットを使おうとしたとき、コンピュータと通信インフラはそれぞれ選べるが、何故、携帯電話はそうなっていないのか?」と問題提起。


「iPhoneユーザはソフトバンクモバイルだけでなく、ドコモのネットワークで何故使えないのか?携帯端末は携帯端末、通信サービスは通信サービスと、二つの層がそれぞれ競争していくことによって、色々な製品が出てくる。サービス料金も下がるのではないか。このような世界を作っていく時期にきているのではないか?」と語った。


夏野剛氏(慶應義塾大学)

夏野剛氏(慶應義塾大学)

慶應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授の夏野剛氏は「僕はSIMロック解除が賛成とか反対とか関係なく、いまSIMロックを外すと現実にどのようなことが起こり、どのようなことが起こらないのか、をお話ししたい」と前置きした上で、


「一つはW-CDMA方式のドコモとソフトバンクモバイル、CDMA2000方式のKDDIとの機種の互換がないということ。もう一つは、ドコモとソフトバンクモバイルの通信ネットワークは通信方式が同じW-CDMA方式でも周波数が異なる。このため、携帯電話へ自由にSIMカードを入れ替えて使うことは、周波数的にも方式的にも今は出来ない」と指摘。



さらに、「日本の場合は、携帯電話へ自由にSIMカードを入れ替えても、音声通話は出来るが携帯メールやコンテンツサービスは継続して利用できないと思って頂いたほうがよい。このような現状でSIMロックを解除してもほとんど実効性がない。これは事実として認識するべき」と、このままSIMロック解除へ進んだ場合に起こり得る、端末仕様面とサービス面での問題を改めて指摘した。


続けて、「SIMロックの解除に反対だと言っているのではなく、『SIMロックを解除すれば、携帯電話へ自由にSIMカードを入れ替えて、携帯メールやコンテンツサービスも同じように使えます』と現時点では出来もしないことを言ったら国民をだますことになりますよ、と総務省へ言っている。いま解除したらどうなる?という話を認識した上で、何のために、いまSIMロックを解除しなければならないのか?をきちんと説明をしなければ。説明責任を全く果たしていない」と語った。


松本徹三氏(ソフトバンクモバイル)

松本徹三氏(ソフトバンクモバイル)

ソフトバンクモバイル副社長の松本徹三氏は「SIMロック解除反対派の代表と言われることに違和感がある。「SIMロックされた端末を許さない売ってはならないと言うならば、私は絶対反対。何故ならば、(現状、音声通話は出来るが携帯メールやコンテンツサービスが継続して利用できないという)様々な不便がでてくる。逆に、日本にSIMロックがない携帯端末は少ないよね、もう少しあってもいいのでは?という話になれば、もう少しあっても良いと思う」と語った。


続けて、「総務省でのヒアリングの冒頭で、この件には多くの勘違いと誤解と見落としがあると申し上げた。2007年にもSIMロック解除の話が出た。その時、しばらく凍結しましょう、という話になぜなったかというと、そもそも各社で周波数も通信方式も違う、全ての携帯電話会社が同じ周波数、同じ通信方式を使うようにならないとこの議論は無理だという意見があるため時期を遅らせよう、2010年ぐらいにもう一度見直しましょうとなった。が、2010年になった今でもそのような状況になっていない」と語った。


高額な海外ローミング料金の改善を目指す

また、松本氏は「SIMロックを解除してほしいという声の中で、納得できるものがある。それは、海外ローミングの料金。海外で日本の携帯電話端末を使いたいが非常にお金がかかる。SIMロックがなければ現地の通信会社のSIMカードを買って利用できるのに、という声。海外へ頻繁に出かける、海外にしばらく滞在するというお客様にどうしたら満足をしてもらえるかも考えている」と語り、


ユーザの利便性を考えると一番良いのはSIMカードを代えることなくローミングができること。高額な料金にならないよう、主要の海外キャリアとローミング契約をし、双方で使い放題でいくら、という協定ができないかを、今、チームを作って検討をさせて頂いている。できるだけ早い時点で海外の方はこうされたらいかがですか?という意向を出したい」という考えも示した。


周波数と通信方式の統一を待つのか?それとも技術の進歩でクリアするのか?

後半は討論会に参加したモバイル業界のジャーナリストからの質問も交えて議論が行われた。その中で、参加者のマイクロソフトの楠正憲氏は、「本当の問題はSIMロック解除ではなく、周波数の問題だということは、そのとおりだと思う。しかし、日本は現状GSM方式に対応していないが、きちんとGSM方式に対応して国際ローミングが可能となっている携帯端末も出ている。また、海外の方が日本へ来た時のことを想定し、海外メーカーは日本がどのような周波数を使っていても利用できるようにしようと携帯端末を作っているメーカーはたくさんいる」。


「韓国の例を見ると、CDMA2000方式とW-CDMA方式のデュアルモードに対応したチップも出てきているので、周波数や通信方式の統一を待たなくても、フェアな環境を作れるのでは?本当に技術の壁があるのか?」と問いかけた。


これに対し夏野氏は「技術的に解決ができる?できない?と言えば解決できる。但し、それは時間がかかり、コストがかかる。また、仮に携帯端末が周波数や通信方式が同じでも、キャリアによって細かい部分において仕様の差が存在する。結局はキャリアにあわせてカスタマイズをしなければならないという作業が発生している。だから、まずは周波数と方式の統一をしましょう、というお話をさせて頂いている」と応じた。


日本メーカーの国際競争力強化と海外メーカーの日本参入のハードル

福田氏は「日本のメーカーが海外との国際競争力を強めるため、海外のメーカーが日本へ参入しやすくしなければならない」と意見を述べた。


夏野氏は「それは進めるべき。しかし、それをやるにはまずは周波数。そして、通信方式を(世界と)合わせる。残念ながら、今現在、総務省が行っている周波数政策は別の方向に向かっている」と語った。


松本氏も「できるだけ日本の携帯端末が海外の携帯端末と近づいたほうが良い、と我々も思っている。携帯端末をスマートフォン的にしてアプリがどんどん入るように。そして、キャリア独自のコンテンツサービスはやめ、統一したAPIを提供していこう、という方向にも動いている。但し、今すぐにとはいかないが、長期的にはその方がいい」と語り、メーカーの国際競争力強化について、それぞれの考え方を示した。


行政はユーザの声を聞き、キャリアはスピード感をもって行動を

議論はおよそ二時間ほどに及び、最後に菊池氏から出演者の各氏に感想を求めた。


夏野氏は「ガイドラインを作ろうとしている総務省の人は、状況を正しく認識しているのかが本当に心配。事実関係がきちんとわかる方を集め、議論をするならしてほしい。そして、その上でガイドラインを作るならしっかり作って欲しい。MNPの議論の時も、モバイルビジネス研究会の時も話した通りになっていない。もっと、競争が激化するはずだったのでは? MNPは、ビジネスモデルは、こうなるはずではなかったのでは?」と述べた。


松本氏は「ユーザの声を総務省はもっと聞いて欲しい。我々も含め、メーカーさんも入れて。ヒアリングはもう2回ぐらいしてほしい。少なくともどのようなユーザがどういう希望を持っていて何パーセントほどいるのか。そのような調査もきちんとして、調査の結果を返していただきたい」と総務省に対し、更なるヒアリングの開催を期待。


福田氏は「今回このような議論が行われるのはとてもプラスだと思う。日本の携帯端末は世界で非常に注目されている。一番リードしている国であり、一番インフラも整っている。そのような環境の中で『このままではいけないよね』というところは三人一致していると思う。しかし、いつになっても議論してばかりだと時間だけが過ぎてしまう。改革をしていかないといけない。改革は一気にやることだと思う。そのためには、ここまで実現するんだというゴールありき。ガイドラインが出る前に、キャリアが自社でリーダーシップを取るぐらいの勢いで。リーダーシップをとっていただけないのであれば、これは行政がリーダーシップを取るしかないです」と、携帯電話会社に対してスピード感を持って取り組んで欲しいと述べた。


日本メーカーの国際競争力強化と海外メーカーの日本参入のハードルを下げる

「あまりにもSIMロック解除の議論が急に決まってしまい、国民になにも説明がされずに進もうとしているという状況からこのような討論会を企画させて頂いた。お越し頂いた皆さんに経緯や問題点を交えて説明して頂いたところが非常に良かったと考えている。皆さんにも少しでもSIMロック解除に関する様々な問題について、興味を持ってくれたら嬉しい」と石川氏は視聴者に呼びかけた。


SIMロック解除を行うという動きは、現時点では周波数や通信方式の方向性も議論が深まっておらず時期早尚という声が改めて挙がったものの、日本メーカーの国際競争力強化と海外メーカーの日本参入のハードルを下げるという点については三者共通した認識であった。


Ustreamやニコニコ生放送で討論会を中継

Ustreamやニコニコ生放送で討論会を中継

今回の討論会はライターの三上洋氏石川温氏が主催し、Ustreamとニコニコ生放送で中継された。Ustreamでの中継は三上氏が中心となった有志のスタッフ。また、ニコニコ生放送でも中継がされ、こちらはニコニコ生放送の運営チームが担当した。Ustreamは同時視聴者が最大800名、累計で3,500名。ニコニコ生放送では累計で5,000名が視聴した。


討論会の模様はUstream及びニコニコ生放送でアーカイブ視聴が可能。UstreamのURLは変更される可能性があるので、筆者のウェブサイトからご覧いただければ幸いだ。


まずは、総務省から示される予定となっているガイドラインの動きに注目したい。

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