「HTC Desire」に見るソフトバンクのAndroidへの取り組み

2010年04月28日 10:13 by 星 暁雄
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HTC Desire:プリインストールされているVoice Search

HTC Desire:プリインストールされているVoice Search

ソフトバンクモバイル初のAndroid端末、台湾HTC製の「Desire」が2010年4月27日に発売された。


日本市場でAndroid端末を売る事業者はこれまでNTTドコモだけであった。ドコモとソフトバンクモバイルを並べてみるとそのスタンスは対照的である。もちろん、その背景には「iPhoneを売っているか、いないか」の違いがある。


日本のスマートフォン市場で、iPhoneは図抜けて高いシェアを持つ。数字を見てみよう。ミック経済研究所の調べでは、2009年度の国内スマートフォン市場は302万台、うちiPhoneのシェアは46.4%(140万台)である。一方、MM総研の調べでは、2009年度のスマートフォン国内市場234万台のうち実に72.2%(169万台)がiPhoneである。調査主体により数字の差はあるが、iPhoneが最も存在感がある端末であることは確かである。


NTTドコモはiPhoneを追う立場にある。そこで、同社はソニー・エリクソン製Android端末XperiaをiPhone対抗の主力スマートフォンと位置づけ、大々的なキャンペーンで売り込んだ。結果、4月1日の販売初日で予約が5万台、その後も一部で品薄状態が続くなど人気を博している。Xperiaは、日本で最初に「ふつうの携帯電話ユーザ」に認知されたAndroid端末となった。


一方、ソフトバンクモバイルは日本国内で唯一、iPhoneを販売する事業者である。NTTドコモのキャンペーンによる攻勢を最小限のエネルギーで受け流す、柔道の技のようなやり方で迎え撃とうとしている。


Desireを発表するソフトバンクモバイルの孫正義氏

Desireを発表するソフトバンクモバイルの孫正義氏


Desireの発表会は異例のものだった。あるTwitterユーザーが孫正義氏へ「ソフトバンクの社食に行きたい」と提案したことから始まったソフトバンク創業30周年記念イベント「ソフトバンクオープンDAY」が2010年3月28日に開かれた。そのイベント中、ソフトバンクおよびソフトバンクモバイルの社長である孫正義氏が自らDesireを手にして登場した。孫氏は、先行するXperiaに比べスペックで勝る点(Android2.1登載、Flash Lite登載)を強調した。ただし、イベント全体のトーンは、ソフトバンクモバイルの主力はあくまでiPhoneだが、Xperiaに負けないAndroid端末をちゃんと出しますよ、という肩の力の抜けたものであった。


 「ソフトバンクオープンDAY」で囲み取材を受ける孫正義氏

「ソフトバンクオープンDAY」で囲み取材を受ける孫正義氏


NTTドコモの宣伝攻勢でAndroid端末への関心が高まった所で発表したのは、実に巧いタイミングだと感心する。2000人を集めたイベントの後に、報道関係者を集めDesireの発表会見が行われたが、その場には孫氏は姿を見せなかった。これも力の入れ方の度合いをさりげなく印象付けた。


操作感の良いDesire

実際に手にしてみると、Desireは地味ながらよくできた端末だ。同じく台湾HTC製でスペックもほぼ同じNexus One(米Googleが2010年1月に発表したAndroidスマートフォンのリファレンス機)の良さを引き継ぎながら、操作感はより向上している。


iPhoneやXperiaのような外装の作り込みのこだわりは感じられないものの、iPhoneに比べ本体の幅が狭く薄いため、手になじむ。3.7インチ有機ELディスプレイはコントラストが強く、見やすい。そしてNexus OneにはないDesire独自の部分が、Homeキーなどが物理ボタンであることと、光学ジョイスティックだ。


Sense UI:7画面を一挙動で一覧して切り換えできる Android標準のUIに加え、HTC社が開発した独自のUIを搭載する。

Sense UI:7画面を一挙動で見渡せる機能などHTC社が開発した独自のUIを搭載。

搭載する独自UIの「HTC Sense」は、Android標準のUIに付加価値を持たせたもの。


例えば、7画面を一挙動で見渡せる機能がある。ホーム画面で「Home」キーを押すか、あるいは任意の画面で2本指でピンチインをすると7枚の画面を一覧し、すぐ切り換えることができる。MacOS Xを使っているユーザーなら、「Exposeのような機能」と言えば分かりやすいだろう。



比較的安価で高性能なAndroid端末

Desireの販売目標数値について、ソフトバンクモバイルは明言を避けている。記者会見で販売目標を質問したところ、「高性能で価格も安い。すごく大きな台数は見込んでないが、しっかりユーザを取りたい」との回答にとどまった。実際、Desireには人気がある。実質負担額2万円以下と比較的安く、しかも最新のAndroid環境が手に入るためだろう。先行予約分で第一次出荷は完売したとの発表がなされている。ただし、具体的な販売台数は明らかにされていないままである。


ソフトバンクモバイルが最も強力に推進するスマートフォンがiPhoneであることには変わりがない。端末の実質負担額を「0円から」とした「iPhone for everybodyキャンペーン」や、それに続く「Wi-Fiバリュープラン(i)」により、iPhoneはむしろ通常のケータイより買いやすい端末となっている。ソフトバンクモバイルがiPhoneを売りまくる状況はしばらく続く。Desireは、iPhoneの陰でひっそりと売られ、しかし着実な人気を得るのではないか。ソフトバンクモバイルにとっても、Android端末への足がかりを築いておくことは同社の未来のために重要なのだ。

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