iPad日本上陸、Android側の目線でそのインパクトを探る

2010年05月27日 16:03 by 星 暁雄
iPadはタブレット型デバイスの水準を一気に上げた

iPadはタブレット型デバイスの水準を一気に上げた

5月28日、Appleのタブレット型デバイス「iPad」の国内発売が始まる。Android搭載デバイスを使う側、そして作る側の目線から、iPadのインパクトを予想してみよう。


iPadは、長い準備期間を経て2010年4月3日に米国で発売された。そして、発売後わずか28日間で100万台を突破というロケットスタートを切った。


iPadを機能面だけで冷静に見れば、iPhone/iPod touchにより高速なCPU(最大動作周波数1GHz)と広い画面(9.7インチ、1024×768画素)を与えただけ、ともいえる。だが、実機に短時間触ってみれば、画面サイズの違い(フォームファクターの違い)が決定的なユーザ体験の違いを生んでいることが分かる。


電子書籍Alice for iPadの画面。iPadを揺らすと時計も揺れる。

電子書籍Alice for iPadの画面。iPadを揺らすと時計も揺れる。

筆者はiPadを使ってみて、強い印象を受けた。そのバッテリーの持ちの良さ、そしてタッチパネル精度や高速CPU、洗練されたUI(ユーザーインターフェース)が織りなす動作の快適さがそこにはある。iPadが売れたのには、それなりの理由があったのだ。


(※Alice for iPadの動画はこちら


iPadは完成度が高く、1カ月で新市場を形成

iPadがAndroid搭載デバイスに与えるインパクトは、楽観的な側面と悲観的な側面とがあるだろう。楽観的な側面は、タブレット型デバイスの新市場が一気に立ち上がったことだ。iPad自体が100万台を突破し一つの市場を形成しつつあるが、それだけでなく、iPadが先導する「タブレット型デバイス」の市場が立ち上がる事が期待されている。


例えば、NTTドコモの山田隆持社長は、2010年5月18日に開催した携帯電話の新製品発表会において「iPadだけでなく、タブレット型デバイスは多数登場する。NTTドコモとして、それらの製品もサポートしたい」と意欲的な発言をしている。実際、大小さまざまなタブレット型デバイス製品が、世界中のメーカーから続々と発表されつつある。


一方、Android搭載デバイスを作る側から見て悲観的な側面は、iPadの商品力が強力なため、競合製品として立ち向かう上でのハードルが高いことだ。iPadは完成度が非常に高く、追いつくのに相当の努力を投入する必要がありそうだ。しかも、iPadは消費者市場からすでに高い認知を得ており、アプリケーション開発者のエコシステムもすでに形成されている。


iPad対応したDropboxの画面。浮き上がるメニュー表示が特徴。

iPad対応したDropboxの画面。浮き上がるメニュー表示(Popover)はiPadで追加されたUI要素。

新ジャンルを切り開く製品の多くは、登場時点では完成度が今ひとつである場合が多い。だが、登場したばかりのiPadの完成度は高い。特に、前述したバッテリーの持ちの良さ、タッチパネルの精度や使用感の良さ、UIの洗練は、強い印象を残す。


iPadの完成度は、他のタブレット製品にとって高いハードルとなる。「iPadに対抗しうるタブレット型端末を作ることは、相当な開発投資が必要ではないか」と見ている関係者は多い。


Androidは、iPad対抗製品の基盤となる

だが、ハードルの高さには、良い側面もある。高いハードルが掲げられている中での開発競争こそが、今までの数々の電子機器のイノベーションを生み出してきた。iPadを基準としたタブレット型デバイスの開発競争は、イノベーションを加速するだろう。


i文庫HDの画面。「青空文庫」などをiPadで読むアプリとして人気がある。

i文庫HDの画面。iPadで「青空文庫」などを読むアプリとして人気がある。


そして、Androidは、iPadに対抗しうるタブレット型デバイスを作るためのプラットフォームとして数少ない候補である。Android搭載端末は、iPhoneと互角の勝負を繰り広げつつある。機能面では、iPhoneOSにできることは、Androidでも可能だ。マルチタスクとインテントの便利さと先進性は、タブレット型デバイスでも有効だろう。


さらに、Androidの最新バージョンであるFroyo(Android2.2)は、Androidの心臓部であるDalvik仮想マシンを高速化するJIT(Just-in-time)コンパイラと、ブラウザのJavaScript処理速度を大幅に向上させるV8エンジン(Google Chromeに搭載されているJavaScript処理系に使われている)が追加されている。さらに、iPhoneでは利用できないFlash10.1が、Froyoではすでに利用可能だ。


Androidは、ソフトウェア環境としての機能では現時点でiPhoneOSを上回っているといえる。すでに多数のメーカーがAndroid搭載タブレット型デバイスを出荷中であり、しかも開発計画を発表しているメーカーが多数ある。Android搭載のタブレット型デバイスの水準が今後急上昇する可能性は高い。利用者の目線で考えると、これほど面白い時期は滅多にないのだ。