

各社端末を持つ講演者の越川氏、重野氏、松井氏、田中氏、主催の石川氏(左から順不同)
5月17日(月)にKDDI、18日(火)にNTT docomoとソフトバンクモバイルの各社が2010年夏モデルの携帯電話の新製品を相次いで発表した。それを受け、ケータイジャーナリスト・石川温氏とライター・三上洋氏が企画・主催の「石川温 初夏のスマートフォン祭」がUstreamで中継された。
本イベントではKDDIとメーカー各社の担当者から、登場したばかりのスマートフォン新製品のプレゼンテーションやインタビューが行われた。
「石川温の初夏のスマートフォン祭」開催概要
<日時>
2010年5月21日(金)
<主催>
石川温(ケータイジャーナリスト)
三上洋(テクニカルライター)
<出演>
重野卓(KDDI株式会社コンシューマ事業本部サービス・プロダクト企画本部オープンプラットフォーム部長)
越川慎司(マイクロソフト株式会社コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部モバイルコミュニケーション本部長)
松井崇(リサーチ・イン・モーション・ジャパン株式会社セールス・プランニング&マーケティング部キャリア・マーケティング・マネージャー)
田中義昭(HTC Nippon株式会社セールス&マーケティング ディレクター)
<司会進行>
石川温(ケータイジャーナリスト)


KDDI株式会社・重野氏
目次
ISシリーズは検討を重ねたau戦略の第一弾
「auはスマートフォン市場から非常に遅れているとあちこちからお叱りを受けているが、なにもしないで黙っていたわけではない。仕込みや検討を重ねた上で作ってきた。その第一弾が、今回発表したIS01とIS02」と話すKDDI株式会社 重野氏。
重野氏は『auが考えるオープンプラットフォームの基本的な方向性』として下記の2点を挙げた。
- オープンの端末を使って新しい市場を作り出し、ニーズに最適化したセカンド端末を提供する→2台目としての需要
- メイン端末としてのスマートフォンを提供し、スマートフォン市場を開拓する→普通の人が普通に持てるスマートフォンを作る
そうした上でIS01及びIS02は新しい市場を作り出し、ニーズに最適化したセカンド端末に当たる製品であると語る。
「スマートフォンを今までの携帯電話のようにイチから作っていくならば、たくさんの端末を生産しないと、非常に高額の端末になってしまう。よって、少ない生産数だが、『ハマる人にとってはものすごく嬉しい端末』を作る。そのためにはAndroidやWindows Phoneを使い、共通化できる部分を多くすることで、購入しやすい値段の端末を作ることが可能となった」と話す。
『普通の人が普通に持てるスマートフォン』という点については、「ベースはスマートフォンの本来の良さをそのまま残し、アプリの豊富さ、柔軟さ、インターネットの自由度等はおさえた上で、日本のケータイの定番機能を備えることで、携帯からスマートフォンへ移ってくるユーザの抵抗をゼロにしようというのがひとつ。さらにアプリ。安心して使える、使いやすい探しやすいアプリのマーケットの環境を提供することで、携帯電話から移行してくる方の抵抗をなるべくなくして市場を広げていきたい」と説明した。
コンシューマ向けスマートブック型の「IS01」、ビジネスコンシューマ向けの「IS02」
IS01(コンシューマ向け)はAndroidを搭載し、auでは『スマートブック型』と呼ばれている。これはネットブックとスマートフォンの中間に位置するもので、ネットブックは少し持ち運びにくいし、スマートフォンは少し入力しにくい。ならば「ネットブックより持ち運びやすく、スマートフォンより入力しやすくて見やすい端末を作れば、喜んで頂ける方がきっといるのでは」という思いからこの端末を作ったということだ。


発売間近のAndroid搭載端末IS01
IS02(ビジネスコンシューマ向け)はWindows Phone端末なので、PCとの連携を重視するユーザ、特にOfficeとの連携を重視するユーザに向けて出したものだという。
さらに、IS01、IS02の次の段階として、秋冬モデルで予定されているAndroidの端末の第二弾では、メールやワンセグの機能に加え、おサイフケータイも対応できるように現在検討の最中ということだ。
au one MarketでAndroidを使いやすい環境にしていきたい
スマートフォンの良さとして『アプリの豊富さ』がある。Androidで利用できるアプリ自体も、数が多くなり良くなっているが、アプリを探しやすい媒体が少ない。それではユーザにとって魅力的なものでなくなり、コンテンツプロバイダーもAndroid向けにアプリを提供しなくなってしまう。そこで今回『au one Market』を立ち上げたそうだ。au one Maketの機能は下記の3つ。
- リコメンド機能の充実
- 推奨アプリによる安心感の形成
- 事業者課金・月額あり(auかんたん決済)
『推奨アプリによる安心感の形成』については、『これは安全(なアプリ)です』という安心感をユーザへ提供することが目的だという。また、スマートフォンにおける事業者課金による請求書決済(auかんたん決済)を提供し、月額課金にも対応するとのことだ。
また『auのISシリーズ』として以下に挙げる3つの最大化を軸に、端末を作っていきたいとの考えを述べた。
1.対象ユーザを最大化
- メール、ワンセグ、オサイフケータイの機能をスマートフォンに搭載することで、ユーザを拡大する
- 誰でも使えるようなスマートフォンにしていく
2.利用を最大化
- au one marketや事業者課金(auかんたん決済)ができることによって、利用を最大化していく
3.コミュニケーションの最大化
- セカイカメラなどの新しいコミュニケーションの形を創造していって、最終的にはコミュニケーションを最大化していきたい


マイクロソフト株式会社・越川氏
Windows Mobileのイメージを変える
マイクロソフトは今夏、docomoやauから新しい端末を発表し、全キャリアからWindows Phoneを出す運びとなった。
マイクロソフト株式会社 越川氏は、Windows Phoneの方向性としてマイクロソフトが目指す3つの柱を説明した。
- ハードウェアの進化に合わせてソフトウェアをいかに最適化して作っていくか。
- ユーザが使いやすく、直感的に使っていただけるようなユーザーインターフェースを目指し、最適化していくこと。
- 普通の携帯であっても、豊富なアプリケーションを搭載して、いつでもどこでも、さまざまな使い方を楽しんでいただくような形にする。
IS02に搭載されているWindows Mobile 6.5.3の魅力
IS02は最新OS『Windows Mobile6.5.3』を搭載し、大型の有機ELパネル4.1インチWVGA、現時点では世界最薄のスライドQWERTYキーモデルを実装している。持ち運びしやすく、QWERTYフルキーボードで入力もしやすいという。IS02に搭載されたWindows Mobile6.5.3で最も力を入れたのは操作性であり、初めての静電容量サポート、スタートボタンなどのボタン類を下にしたナビゲーションボタンの配置、アイコンの巨大化、タブメニューに置き換わる新しいUI、ズームボタンが実装されていることを説明した。
Windows Mobile6.5.3は、日本側の要望を深く広く取り入れて作られているという。「自動車で移動する欧米人と比べて、電車で移動する日本人・アジア人にとってはつり革につかまった状態で片手で操作するということからボタンを下へ配置する仕様となった。アイコンを大きくすることや、メニュー、文字も大きくするということなどを実装することができたのは日本人担当としても嬉しい」と語った。日本側の要望を深く取り入れ、日本にあったスマートフォンを出すことができた喜びは大きく、越川氏は「実際に触ってもらえば、快適なインターフェースでこれまでのWindows Mobileのイメージが変わるぐらいの改善を施せた」とコメントした。


リサーチ・イン・モーション・ジャパン株式会社・松井氏
コンシューマを意識した提案でBlackBerryの更なる認知度向上へ
リサーチ・イン・モーション・ジャパン株式会社 松井氏は5月18日にドコモスマートフォンとして発表された「BlackBerry Bold 9700」を紹介。
2009年2月に発売したBlackBerry Bold 9000から変更された大きなポイントとして、以下を挙げた。
- スリム&軽量化
- ディスプレイの解像度アップ
- オートフォーカスや手ぶれ補正に対応したカメラ機能の向上
- メモリ容量の増大
- トラックバッドを新規採用
- 日本語サポートの充実
- より見やすいゴシック体のフォントの採用


ドコモ夏モデルとして発表されたBlackBerry
またBlackBerry Bold 9700の特長として4点を説明。
- QWERTYキーボードとトラックバッドによる快適な操作性
- 簡単にメールをセットアップでき、フルブラウザでWebサイトを閲覧できる
- 充実機能のコミュニケーションアプリ
- スリム&軽量で海外でもタフに使える
BlackBerryは今までビジネスコンシューマに特化した特殊な端末であった。しかし、コンシューマの方が持つようになってきたことから、「会社以外でもより使えるシーンを提案していき、BlackBerryの更なる認知度向上も目指していきたい」と話していた。


SIMロックへの問いに答えるHTC Nippon株式会社・田中氏
会場からも飛び交うSIMロックフリーについて
会場の参加者から「日本で家電量販店と連携してSIMロックが外れた端末を卸すというプランはないのか?」という質問に対し、HTC Nippon株式会社 田中氏が応じた。
「理論的には端末の奨励金が回収された時にSIMロックを解除するのはありだが、SIMロックが日本のビジネスを阻害しているとは個人的にはあまり思えない」と考えを示した。
SIMロックがかかった端末はアジアでも実践されていることからSIMロックを解除することでお客様が喜べば、いつでもするという。しかし、日本はキャリアビジネスを中心に、キャリアのワンストップサービスやケアが非常に重要なので、その点を尊重していくことになる。また一番大事なことはお客さんが本当に喜ぶのか?ということにあるとした。
今回の討論会はライターの三上洋氏と石川温氏が主催し、三上氏が中心となった有志のスタッフによりUstreamで中継され、最大約300名が視聴した。


スマフォ祭りの主催者 三上氏(左)と石川氏(右)
「今回、各社担当者から直接スマートフォンの話を聞け、このようにキャリアの方やメーカーの方の直の声をUstreamで届けることができたのは良かったと思っている」と石川氏は視聴者へ語った。討論会の模様はUstreamでアーカイブ視聴が可能なので、キャリアの方やメーカーの方が語った直の声を聞きたい方はご覧頂ければ幸いだ。
※本イベントはUstreamで視聴できます。