

姉妹機であるLYNX SH-10B(上)とIS01(下)
KDDIから6月末に発売された「IS01」と、NTTドコモから7月下旬に発売された「LYNX SH-10B」(以下LYNX)は、細部は異なるものの、事実上の姉妹機として世に出ました。
Androidソフトウェア開発者向け専用端末として、3G通信機能をはじめとする一部機能を省きながら、開発向けに様々な仕様が変更されている「JN-DK01」を含めると、スマートブック三姉妹と言えるでしょう。「JN-DK01」は高額であることと、その性質からあまり一般ユーザが手にする機会はないのではないでしょうか。
そこで、今回は一般ユーザにも身近な「IS01」と「LYNX」で、細部の違いを、使い勝手という視点から検証してみたいと思います。
目次
根っこの部分は基本的には同じだが……
IS01とLYNXは、基本的に根っこの部分はほぼ同じです。設定画面のメニューの並びや、プリインストールされているウィジェットやアプリケーションの種類も、似通っています。
一部通信キャリアのサービスに依存する部分をはじめ、プリインストールされるウィジェットの構成に相違はありますが、シャープのサイトからダウンロードすることで、双方で使うことができるウィジェットも少なくありません。その意味ではIS01とLYNXは使い勝手の面でそれほど違いがないように見えますし、どちらかを所有したいと思ったときに、どちらにすべきかを非常に迷ってしまいがちです。
しかしソフトウェアレベルの細かな部分で、IS01とLYNXは実は大きく使い勝手が異なってもいます。通信事業者との通信状況、自宅や移動先での電波状況のほか、デザイン的な好みなどと同じくらい、この違いを見極めることは選択に重要な意味を持ってきます。
<基本的に共通しているアプリ>
IS01とLYNXで基本的な部分が共通しているアプリは以下の通りとなります。アイコンの違いや、ごく細部のデザインなどの違いがある場合もありますが、アプリとしての動作に違いがないものについては共通しているものとみなします(Googleアプリケーションは割愛します)。
- 電話
- 電話帳
- スケジュール
- mixi for SH
- twit SH
- RSSリーダー
- カメラ/ビデオカメラ
- フォト
- メディアプレーヤー
- コンテンツマネージャー
- ワンセグ
- 内蔵辞書/ネット辞書
- Documents To Go 完全版
- 赤外線受信
- アラーム・タイマー
- バーコードリーダー/名刺リーダー/情報リーダー/テキストリーダー
- ボイスレコーダー
- メモ帳
- 方位計
メールについては基本機能は共通していますが、ショートメッセージまわりの仕様が異なる(IS01はCメール、LYNXはSMS)ことと、PCメールのアカウント設定での「PCメール簡単設定」で設定可能なアカウント項目にかなり違いがあります。


IS01(上)はau oneメールとGmailだけだが、LYNX(下)ではGmail、Yahoo!メール、mopera Uメールの3種類となっている
最大の違いは通信まわり
当たり前と言ってしまえば当たり前なのですが、IS01とLYNXで最大の違いとなるのは、携帯電話の通信方式です。IS01はKDDIが採用しているCDMA2000 1x EV-DO Rev.A方式、LYNXはNTTドコモが採用しているW-CDMA/HSPA方式を使用しています(プロセッサチップセットのSnapdragonは通信部のチップ仕様の違いから、型番が異なります)。
通信方式の違いは、Androidの部分にも微妙な違いを与えています。設定→通信→モバイルネットワーク設定を開くと、IS01では「データ通信」のオン/オフと、恐らくほとんど使う機会はなさそうな「高度な設定」の2項目しか表示されません。
対してLYNXでは海外ローミングに関わるデータローミング設定やネットワークオペレーターの選択機能のほか、アクセスポイントを自分で設定する事も可能です。これはLYNXが3Gのみ国際ローミングに対応している(GSMは非搭載)のに対し、IS01は海外での使用ができないことも関係しています。もし海外でも使用する必要があるのであれば、LYNXを選択する方がよいでしょう。


モバイルネットワーク設定の項目はIS01(上)は少ないが、LYNX(下)はこれまでのAndroid端末と同じような項目が用意されている
この違いは別の部分の使い勝手にも関わってきます。これまで発売されてきたXperiaやDesireなどのAndroid端末では、パケット通信機能を遮断したい場合、『APNdroid』などのAPN(アクセスポイント)設定遮断アプリを使用すれば、ワンタッチでパケット通信のオン/オフをホーム画面上で行うことが出来ました。
同じ事がLYNXでは出来ますが、IS01ではこの方法を使ってパケット接続をオフにすることが出来ず、現状ではメニューに入って設定をオフにする必要があります。


APN設定機能を持ったアプリで、LYNX(下)は設定のオン/オフができるが、IS01(上)ではそれができない
実はこれはIS01固有の問題ではなく、CDMA2000方式を採用したAndroid端末(米VerizonのDROIDや、米KDDI mobileで販売されているHTC Heroなど)では共通して発生します。
これはアクセスポイントの取扱方法が異なることが原因です。不具合ではなく、あくまで仕様の違いなのですが、使用上の利便性で大きく差がついてくる項目のひとつにはなってしまいます。
デスクトップ(ホーム)画面、メインメニュー画面の大きな違い
基本的な部分は共通しているIS01とLYNXですが、ユーザーインターフェース(UI)設計にはかなりの差があるように感じられます。IS01は「カード型メニュー」を採用しており、デスクトップ画面やメインメニュー画面は任意に枚数を増やすことが可能です。アプリのジャンル、ウィジェットの数などで分類に使うこともできるため、実用上非常に便利な機能となっています。


IS01のカード型メニュー。デスクトップ画面やメインメニュー画面を任意に増やすことができる
これに対して、LYNXではデスクトップ画面はデフォルトで3面、任意に追加することも出来ますが、最大で5枚までとなっています。またメインメニューについては、アイコンの並べ替えをすることは可能ですが、メニュー画面の枚数自体を任意に変更することは出来ません。
デフォルト状態では2枚表示されていますが、インストールするアプリが増えて表示する領域をはみ出して初めて、3枚目に移ることが可能となります。


LYNXはデスクトップ画面の枚数に制限がある。メインメニュー画面は任意の追加ができない
また、IS01ではメインメニューを開いた状態でアプリを起動し、そのアプリを終了させた後もメインメニューが開いたままになっています。これに対して、LYNXではメインメニューを開いてアプリを起動後、アプリを終了させるとメインメニューは閉じられた状態になっています。
従来のAndroid端末の動作を考えると、LYNXの方が今まで通りの動作なのですが、複数のアプリを切り替えるような場面では、IS01の方が圧倒的に使い勝手が良いように感じられます。
LYNXにはDLNAサーバ機能がある!
DLNAとは「Digital Living Network Alliance」の略で、デジタル家電やPCなど異メーカー間の機器の相互接続を容易にするために結成された業界団体の名称であるのと同時に、接続のための規格名でもあります。
LYNXにはDLNAサーバー機能が搭載されており、保存している画像や音楽を無線LANネットワークを介して、DLNA対応のAQUOSで表示・再生する機能を搭載しています。


DLNAサーバー機能を有効にすると、本体内やmicroSDカードに保存した画像や音楽を対応テレビで再生が可能
対応機器がAQUOSのみとされているのは、おそらく動作確認上の問題も多分に含まれていると思います。筆者の自宅には東芝製のDLNA対応テレビがありますので、試しにDLNA機能の設定をして接続してみたところ、正常に画像や音楽を読みとることが出来ました。
前述のように、DLNAは異メーカー間の相互接続を目的とした規格であるため、メーカーが異なっていても接続が可能である場合があります(あくまでメーカーやドコモの保証外にはなりますが)。
LYNXにはFMトランスミッターがない!
ハードウェア的な機能にはなりますが、IS01にあってLYNXにはない機能のひとつが「FMトランスミッター」機能です。FMトランスミッター機能は、出力先として設定することで、IS01で再生している音声をFMラジオに飛ばすことができるというものです。


IS01(上)にはFMトランスミッター機能があるのに対し、LYNX(下)には搭載されていない
車で移動中、IS01に保存している音楽を再生したい場合には非常に重宝する機能ですが、LYNXには機能そのものが存在していないため、利用することが出来ません。
LYNXにはストラップホールがある!
モバイル機器を使用していて恐いことのひとつが、使用中の落下です。落下防止のためにストラップを利用する人は多いのですが、スマートフォンには意外とストラップホールが存在しないものが多いのです(これはストラップを使用する習慣がない、海外のモデルが多いことも無関係ではありません)。
このため、ストラップを使用できるようなカバーが商品化されるモデルもあります。IS01にもストラップホールはないのですが、LYNXにはストラップホールが用意されているのです。


LYNXにはストラップホールが用意されている
これは落下防止のためには非常にうれしいところです。
一長一短、どちらを選ぼうか?
同じように見えて、搭載されている機能やアプリなどの細部の動作が異なっていることがおわかり頂けるのではないかと思います。それぞれに一長一短があり、どちらが優れているとか劣っているということではありませんが、どちらかの機種にしかない機能を必要とする場合は非常に重要な問題となります。
最後に本稿で記述したそれぞれの特徴をまとめてみました。
IS01
- 「カード型メニュー」を採用していて、デスクトップ画面やメインメニュー画面は任意に枚数を増やせる
- FMトランスミッターがある
LYNX
- 3Gのみ国際ローミングに対応している(GSMは非搭載)ので海外でも使用できる
- DLNAサーバー機能が搭載されている
- ストラップホールがある
それぞれの機能を比較して、自分に必要な機能が搭載されていることを、選択ポイントのひとつにするとよいのではないかと思います。本稿がそのような選択の一助となりましたら、この上ない幸せです。