日本Androidの会:注目の電子出版ビジネスとOracleによる訴訟問題に迫る

2010年09月08日 14:50 by いのたしん
日本Androidの会 9月定例イベント開催。写真は講演者が持参した電子書籍デバイス

日本Androidの会 9月定例イベント開催。写真は講演者が持参した電子書籍デバイス

Androidユーザや開発者のコミュニティ「日本Androidの会」は9月6日、立教大学 池袋キャンパス 第14号館にて、9月の定例イベントを開催した。


今回の主な話題は「電子出版」と「OracleによるAndroid訴訟」。注目のビジネスとAndroidの将来に関わる重要な訴訟の情報を扱うとあって、会場はほぼ満員状態となった。


「日本Androidの会9月定例イベント」開催概要


第一部 電子出版

第二部 OracleのAndroid訴訟

第三部 会の活動に関して


<日時>

2010年9月6日(月)

<場所>

立教大学池袋キャンパス14号館

<主催>

日本Androidの会・早稲田大学

<協力>

立教大学

<講演>

下川和男氏(日本電子出版協会副会長)

権正和博氏(KDDI メディア・ビジネス部)

星暁雄氏(ITジャーナリスト)

菊池隆裕氏(日経BP社)

宮田友美氏(日本Androidの会 テスト部)

Androidドキュメント日本語翻訳プロジェクト


電子書籍に関する2つの講演を開催

第1部は「電子出版」に関して、2つの講演が行われた。


1.「電子出版元年 iPad、Kindleで変わる読書環境」


最初に登壇したのは日本電子出版協会副会長/イースト(株)代表取締役社長の下川和男氏。同氏は「電子出版元年 iPad、Kindleで変わる読書環境」をテーマに講演を行なった。まず日米の電子書籍の歴史を説明しつつ、液晶端末とeInk端末の特徴を解説。「eInkの方が目に優しく電池寿命も長い。文字をしっかり読むならeInkになるのではないか」とした。


下川和男氏(日本電子出版協会副会長/イースト(株)代表取締役社長)

下川和男氏(日本電子出版協会副会長/イースト(株)代表取締役社長)


またインプレスR&D調べの日本の電子書籍市場規模について紹介。「2009年は574億円でアメリカより市場が大きく、うちケータイ・コミックが80%を占める。2010年以降は板型PCとスマートフォンが急成長。2014年には電子書籍市場は1,300億円になると予測され、うち600億円が新端末」と語った。


その他、日本の電子書籍の動向や各種デバイスの特徴も紹介し、Android端末に関しては「Apple App Storeは世界に1つなのに対し、Androidは多数のマーケットに分散。アプリ登録を1ヵ所に統一してもらいたい」とその課題を述べた。


2.「電子書籍ビジネスのこれまでと今後の展望について」


続いてKDDI(株)新規ビジネス推進本部 メディアビジネス部 書籍サービスグループの権正和博氏「電子書籍ビジネスのこれまでと今後の展望について」をテーマに講演を行なった。


auでは一般的な携帯電話において、電子書籍の売り上げのうちコミックが9割を占めることを挙げつつ、電子書籍の利用者属性を紹介。電子書籍の利用者は20~30代女性の利用が多く、平均利用額も1,000円/月程度と、音楽やゲームといった他サービスと比較してもはるかに高いことや、その一方で利用率は低く「携帯だと読みづらそう」という意見が携帯電子書籍未利用の理由のうち54.5%を占めるなどと説明した。


権正和博氏(KDDI(株)新規ビジネス推進本部 メディアビジネス部 書籍サービスグループ)

権正和博氏(KDDI(株)新規ビジネス推進本部 メディアビジネス部 書籍サービスグループ)


また電子書籍市場成功のカギとして、著名なコンテンツ、人気コンテンツの確保等によるコンテンツの質の向上、コンテンツの量を揃え多数ユーザの趣味趣向を充足するラインナップを実現することを挙げ、さらにオープン時代の電子出版の課題を「DRM」「データフォーマット」「コンテンツ販売方法」「ビジネスモデルの確立」の4点とした。


そして「KDDIもLISMOの柱の1つとして電子書籍を考えている。今後もAndroidを含めて展開していきたい」と抱負を語った。その他KDDI、SONY、凸版、朝日新聞社のたちあげた電子書籍配信事業準備(株)に関しては「オープンなプラットフォームの構築を目指す。賛同してもらえるところにはどんどん参加してもらいたい」と、協力を呼びかけていた。


Oracleの狙いはお金?Oracle vs Googleの訴訟の講演も

第2部では「AndroidをめぐるOracleの対Google訴訟を考える」をテーマに、ITジャーナリスト星暁雄氏が講演を行なった。


2010年8月12日にOracleが「AndroidがJavaプラットフォームの特許と著作権を侵害している」などとしてGoogleに対して起こした訴訟についての話題を展開し、「Oracleが、今回根拠のない訴訟によりGoogleとオープンソースJavaコミュニティの両方を攻撃するという選択をしたことは非常に残念」とするGoogleの声明や、この件に関する報道、業界著名人のコメント等を紹介。


その上で「Oracle(旧Sun)はモバイル分野でJava MEのライセンス収入を得ているが、Androidからは収入が得られない。そこで「モバイル分野でAndroidはJavaと競合する」との主張になったと考えられる。狙いはお金なのではないか」と、Oracleの考えを分析した。


星暁雄氏(ITジャーナリスト)

星暁雄氏(ITジャーナリスト)


「GoogleはOracleと戦うと思うが、Oracleは持ち駒が多いので何らかの損害は出るかもしれない。しかし我々が今考えるべきはそこではなく、これが“オープンソースへの攻撃”だという部分。もしOracleの主張が全面的に受け入れられると、オープンソースに対する同様の訴訟が多発する可能性がある。むしろGoogleが警戒しているのはそちらだろう。オープンソースに対して包括的な特許が認められるかどうかが大きな問題となる」とした。とはいえ「OracleにはAndroidを潰す理由はなく、GoogleにもAndroid開発をスローダウンする理由はない。結論としてはAndroidの急成長は続くが、裁判も長期にわたって続くだろう」と展望を示した。


今後も様々な活動により動向が注目されるAndroid

その他第3部では日経BP社の菊池隆裕氏と大谷晃司氏が「Android Application Award(A3)」と「i-appli Advance Award」の取り組みについて紹介。A3に関しては「A3 2010 in spring」応募者の属性等を示しつつ、冬の開催への協力を呼びかけていた。


左:菊池隆裕氏((株)日経BP社) 右:大谷晃司氏((株)日経BP社)

左:菊池隆裕氏((株)日経BP社) 右:大谷晃司氏((株)日経BP社)



宮田友美氏(日本Androidの会 女子部・deb/(株)オープンストリーム)

宮田友美氏(日本Androidの会 女子部・deb/(株)オープンストリーム)

また日本Androidの会 女子部・deb/(株)オープンストリームの宮田友美氏がテスト部についての紹介とメンバー募集を実施。テスト部はAndroidの動作確認テストについて、公式サイトの翻訳やテストのノウハウなどの情報共有及び、テストにて発生する問題解決を目的に活動する。


さらにAndroidドキュメント日本語翻訳プロジェクトの紹介が行われた後、今回の定例イベントは終了となった。


Androidの将来に深く関わる電子書籍と訴訟の話題に対し、来場者はメモを取りつつ深く聞き入る様子が見られた。これらの話題の今後の動向が注目されるところだ。