末次由紀『ちはやふる』~畳の上の格闘技!熱血青春かるたマンガ~

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『ちはやふる』第1巻表紙

『ちはやふる』第1巻表紙

2007年から講談社「BE・LOVE」で連載中であり、2011年には第35回講談社漫画賞少女部門を受賞した本作『ちはやふる』は、「競技かるた」の女性日本一「クイーン」を目指す主人公・綾瀬千早と、仲間たちの友情と成長を描いた物語です。2011年には日本テレビ系でアニメ化されました。




「競技かるた」の奥深い世界

「競技かるた」とは「社団法人日本かるた協会」による小倉百人一首を用いた競技。「上の句」と「下の句」からなる百人一首、その「下の句」だけが書かれている「取り札」100枚のうち、50枚を使用して、自陣、敵陣に分けて並べる。読手によって「上の句」が読まれるので、対応する「取り札」を取る。先に自陣の札をゼロにしたほうが勝者というルールです。


「百人一首」を用いたお正月の風物詩、伝統的で風流なイメージのある「かるた」ですが、「競技かるた」は対人競技であり、「暗記力」だけでなく「反射神経・瞬発力」長時間の試合に耐えられるだけの「体力」「気力」も求められる競技内容であることから「畳の上の格闘技」とも呼ばれます。



ベタながらも秀逸なテンポ


本作はこの「競技かるた」を愛して止まない転校生の少年・綿谷新と、主人公・綾瀬千早の小学6年生時の出会いから始まります。それまで「自分の夢」を持っていなかった千早が、新の「競技かるた」への情熱に触れ、「夢」を持つきっかけを与えられるのです。


『ちはやふる』第9巻表紙

『ちはやふる』第9巻表紙

序盤以降、物語の舞台は小学校編から高校生編へ移るのですが、千早がかるたに夢中になり、仲間たちを集め、高校にかるた部を設立し、団体で高校選手権へと出場するという流れが、実にテンポ良く描かれ、気付くと10巻くらいは一気読みできてしまいそうな勢いで展開します。


たとえば、物語のはじめ、先述した「クラスに転校生がやってきて、その子と知り合いかるたの面白さと出会う」までのエピソードは、第1話の前半ほんの数十ページで過不足なく描かれています。読者を一気に物語の面白さへ引きこむ作者の力量は非常に見事と言えるでしょう。



かるた部のメンバーは、千早・新と幼馴染みの悩める秀才・真島太一。「競技かるた」よりむしろ「歌」としての百人一首を愛する呉服屋の娘・かなちゃん。勉強をすることしか才能がないと劣等感を抱く机くんなどなど。


個性豊かな仲間たちは、それぞれのキャラクターが際立ち、ともに切磋琢磨し成長する姿には、眩しいほどの「青春」の輝きがあります。



男でも読める女の子マンガ

『ちはやふる』は、絵や掲載誌で考えればマンガの分類としては「少女マンガ」ですが、勝負のスリリングな描きぶり、熱血スポ根的内容は、むしろ男性読者のほうが夢中になれるのではないかという内容です。


「古典としての百人一首」をきちんと描いている点も本作の素晴らしい部分の一つです。詠まれる歌を「イントロ早押し問題」ではなく、「美しい内容が詠まれた歌」として味わうこと。競技ではあるが、それ以前に1000年近く以前から詠まれ続けてきた文学であるという視点が、物語を彩るポイントとして随所に反映されているのです。



極めて秀逸なセンスによって描き出される名作『ちはやふる』。男性読者も女性読者も、読まない理由はありません!主人公たちのひたむきで真っ直ぐな姿には、冗談抜きで目頭が熱くなりっぱなしになること間違いありません!ぜひご一読を!!

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