安野モヨコ『働きマン』~仕事モードオン!戦う女編集者~

2012年04月24日 16:09 by TOP BOOKS編集部
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『働きマン』第1巻表紙

『働きマン』第1巻表紙

「働きマン」は講談社「モーニング」に2004年から連載(2011年現在休載中)されている職業マンガです。2006年にフジテレビでテレビアニメ化、2007年に菅野美穂主演日本テレビ系で実写ドラマ化されています。




大きな野望を持つ等身大の主人公

主人公の28歳、独身、元巨乳の松方弘子は、「剛胆社」で働く編集者。発行部数60万部の週刊誌「JIDAI」編集部に在籍し、野望は世界的に売れる雑誌を作ること。そのために30歳までに編集長になるのが目標です。
そんな彼女の異名は「働きマン」。〆切り直前の突然の大スクープ時など、ここイチバンで仕事モードに入ると、血中の男性ホルモンが増加して、寝食恋愛衣飾衛生の観念は消失し、通常の三倍の早さで仕事を遂行する恐るべき能力があるのです。
といっても、本作の内容は超能力が飛び交うスーパーバトル・ビジネスマンガ!などではなく、シビアな「仕事」の世界を描いたもの。


ひとたびニュースが入ればその瞬間に紙面を書き換え、〆切りまでは息もつけない緊張が続く…それも毎週。という壮絶な総合週刊誌の現場での出来事を、1話ごとに編集部の一人の仕事観をクローズアップしながら描かれる、1話完結ではありませんが、それに近い構成で描かれることが多いです。
物語の舞台である雑誌の編集部についての知識がわかりやすく詰め込まれた内容は、徹底した取材をもとに作られているだけあって(どうやらこの主人公・モデルとなっている女性編集者がいるそうとか…同業者が読むと思い当たる人物が頭に浮かぶそうです)、非常に濃度が高く、ひと言で編集といっても、もちろん仕事の内容はポジションによって千差万別であることがよくわかる内容。読んでいて、ひとりでに編集者としての知識がついてしまいそうなほどです。



『働きマン』第4巻表紙

『働きマン』第4巻表紙


「生きること」と「働くこと」

「仕事」や「働く」ということに徹底的に突っ込んだ内容と、主人公の仕事至上主義的な考え方は、一見、現在の「スロー・ライフ」的な提案とは逆行するような時代錯誤な考え方と思われるかもしれません。しかし、主人公・松方弘子と彼女を取り巻く同僚・登場人物たちが、「仕事」を含めた人生そのものについて問うているという内容は、極めて現代的な視点だと言えます。



主人公を「女性」にすることで、「働くことを選ぶ」という、男性が主人公の物語では棚上げになっていた根本から語られています。仕事観は簡単に言い表せるものではありませんが、見事に各キャラのセリフとして表現しています。


—おれは「仕事しかない人生だった」 そんなふうに思って死ぬのはごめんですね—
—あたしは仕事したな——って思って 死にたい—


正反対の仕事観を持った二人のセリフが、同じページで対照的に描かれる第1話のラストシーンは非常に印象的です。もちろんこれ以降も名言は多数!ぜひ購読して確かめていただきたい。キャラクターごとに生き様は違いますが、どの人物の考え方にも思わずうなずいてしまいたくなります。



『働きマン』は、悩みながらも、人生のほとんどを「仕事」に捧げなければならない現代の私たちのために描かれた作品です。ぜひ読んでいただきたい!

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