曽田正人『capeta』~魂が震える!最高のエンターテイメント。本物のモーターレースマンガ~

2012年04月26日 16:00 by TOP BOOKS編集部

『capeta』第1巻表紙

『capeta』第1巻表紙

2012年現在「月刊少年マガジン」で連載中であり、2005年には第29回講談社漫画賞を受賞した本作『capeta』はレーシングカートと出会い、その才能を開花させた天才的レーサー・平 勝平太(通称カペタ)の成長を描いた物語。
徹底した取材に裏付けされた冷静な視点と、人間のほとばしる感情を情熱的かつダイレクトに伝える圧倒的な表現技術によって描かれた、非常に完成度の高いエンターテイメント作品です!


難易度の高いモータースポーツ・マンガ

実在のモータースポーツを題材にした作品は、マシンの技術面での正確な知識と、綿密な取材が必要不可欠。ですが、実際に描く上では、幅広い読者層を考えると極端にテクニカルな内容にはできないというジレンマも抱えています。


これは、あらゆる物語につきまとう悩みとも言えますが、直接的な身体性をともなうものや、一般的な経験の延長上にあるものと比較すると、やはり馴染みのうすいモータスポーツものはエンターテイメントとして難易度の高いテーマだと言えます。


こと細かに決められた規格(テクニカルレギュレーション)の中で、いかにマシンの能力を最大限発揮するか。というのが「F1」を頂点としたマシンレースのいちばんの「キモ」の部分。ここ切り込まないことには、物語の背骨を支えることができません。『capeta』では、この技術的な描写が実に正確に、かつ適度になされているのです!あまり知識のない読者がすこし読み飛ばしながらも「なんとなく」理解できるほどにやさしく、同時に、モータースポーツ・ファンがシッカリ読んでも納得のいくレベル。きわめて高度な離れ業を平気でやってのけているのが、この作品の大きな魅力のひとつです!!



『capeta』第25巻表紙

『capeta』第25巻表紙


ほとばしる感情の描写!

もうひとつの魅力は、圧倒的な感情の描写です。登場人物たちの熱い魂を、セリフ・コマの連続・そして力強い描線で余すことなく伝える作者の技量に、心底ほれぼれします。
どアップでキャラクターの表情を真正面から捉えた大ゴマなどは、思わずこちらの胸が震えるような生命力に溢れています。そして、読後に爽快な気持ちになるような、ポジティブな感動が全篇を通して描かれているのです。



物足りない日々を過ごす主人公・カペタが、レーシングカートと出会い、逆境をものともせず成長してゆく……こんなベタなサクセスストーリーの骨組みが全く古くさく見えないくらい、キャラクターの描きに不思議な力強さ、「魂」が込められているのです。




「才能」に引きこまれていく!

このマンガを読み進めていくと、どんな困難もカペタなら乗り越えられそうな気持ちになるのですが、これは同時に、物語中のカペタを取り巻く人々の感情であり、物語の主人公・カペタの天才的な才能でもあります。


自分を取り巻く逆境をものともしないどころか、周囲の人間を巻き込み、全てを味方につけてしまう主人公のカリスマ性…読者も、登場人物の一人のようにおもわずカペタの才能を信じてしまう…これが、このマンガの非常におもしろい部分なのです。


読者の視線を「主人公(の視線)」と同化させ、共に成長を楽しんでもらう。というのは成長物語を読ませる上での一つのテクニックなのですが、この作品ではむしろ、読者は「周囲の人間の一人」となって、天才的な主人公・カペタの成長を見守るような気持ちになるのです。



モータースポーツを題材にしたマンガというと、とっつきにくい印象を持つかもしれませんが、いちど『capeta』を読んでみれば、その心配が杞憂であることがわかるはず。むしろ、モーターカーの魅力にカペタと同様、どんどんのめり込んでいくこと請け合いです。表彰台のトップを目指す、どこまでもアツい若者の情念に酔いしれてみるのはいかがでしょうか?