中村光『聖☆おにいさん』~史上最強のコンビ降臨!脱力系聖人マンガ~

2012年05月01日 16:00 by TOP BOOKS編集部

『聖☆おにいさん』第1巻表紙

『聖☆おにいさん』第1巻表紙

2009年手塚治虫文化賞短編賞受賞作品、2012年現在も「モーニング・ツー」で連載中の『聖☆おにいさん』は、あのブッダとイエスが、現代の東京・立川の安アパートでルームシェア生活をしているという設定で描かれている日常コメディ。




現代に溶け込めそうで溶け込めないおかしさ

ブッダとイエスは、「下界での長期有給休暇を満喫するために降臨している」という設定。ゲームやパソコン、デジタルガジェットが大好きな浪費癖のあるイエスと、細かい節約に努めながらそれ自体に喜びを感じている主婦の鏡のようなブッダ。
二人の見た目は20代後半から30代前半の青年風、お忍びなので服装はTシャツにジーンズという「下界コスプレ」姿。家賃4万円、風呂なし・ペット禁止の格安アパートで、質素ながらも現代日本の生活を満喫しているのですが、聖人的トラブルが起きて毎度大騒ぎ。といった内容です。


「聖人的トラブル」って例えば、ブッダが貧窮していると、動物たちがアパートに集まってきてしまって大家さんに怒られたり、イエスが、原材料に石が含まれている食器などをパンに変えてしまったり。他にも、銭湯の湯を全てワインに変えてしまったり、徳のある言葉を言って後光が射してしまって、周囲から注目されてしまったり…など、宗教的故事と現代社会をうまく掛け合わせた様々なネタのことを指します。つまり、この物語の中では、世界三大宗教の神々やオリンポス神、ヒンドゥー神などの古典宗教が、語り継がれている逸話なども含め全て実在していたという世界設定になっているのです。これがこの作品のなによりおもしろいところ。


諸神は「天界」で暮らしていて、時折ブッダとイエスの様子を見に関係者(四大天使や十二使徒、十大弟子や天部衆、マーラやルシファーまでも)が二人のもとを訪れたり、天界の様子として語られたりもします。



教養的ナンセンスコメディ

この作品は、宗教を取り扱った作品なのに、内容的には全く堅苦しさがありません。限りなくライトで、どの宗教を賛美することも貶すこともないよう細心の注意を払った上で、様々な故事を作者が調べ上げ、知的な笑いに転化させている素晴らしい娯楽マンガなのです。絵柄も老若男女問わず幅広い層が楽しめるような清潔感のある描きですので、読みはじめればすんなりと『聖☆おにいさん』の世界へ馴染めるでしょう。


この作品、この世で最もキャラ立ち(キャラクターに際立った存在感があるという意味)しているブッダ、イエスに、聖書や仏教史という世界共通の元ネタ…これは最強の二次創作マンガと呼べるかもしれませんね。


このレビューを書いている筆者は、どちらの宗教に関しても豊富とは言えない知識しか持ち合わせていませんでしたが、それでも十分に楽しめました。むしろ知らないネタが気になって調べてみることで、それぞれの宗教についてより詳しいことを知るきっかけにもなっています。そして、より知識が深まるほどにさらに楽しく読めるマンガなのです!



H.N(ハンドルネーム)いえっさとして人気ブロガーとなっているイエスが「神降臨!」のカキコミを読んで、「なぜバレたのだろう…」と本気で困惑する姿や、部屋で「南無三」や「ニルヴァーナ」といった文字をTシャツにプリントするブッダ…ちょっぴり変わった脱力系聖人マンガ『聖☆おにいさん』で、神さまをより身近な存在に感じてみるのもおもしろいかもしれません!