幸村誠『プラネテス』~宇宙の掃除屋登場!本格近未来SFマンガ~

2012年06月14日 16:00 by TOP BOOKS編集部
『プラネテス』第1巻表紙

『プラネテス』第1巻表紙

『プラネテス』は講談社「モーニング」で1999年から2004年まで不定期連載(現在は一旦完結という状態)していた「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」を題材に扱ったSF作品です。2003年にはNHK BS2でアニメ化。2002年度星雲賞コミック部門受賞、2005年度にはアニメ作品が星雲賞メディア部門を受賞しました。


本作の舞台は2070年代の太陽系。月面で資源開発を行い、火星には実験居住施設が建ち、木星への有人探査計画が進む時代。



主人公・星野八郎太(通称ハチマキ)は、「いつか自分用の宇宙船を買いたい」と夢見つつ、現状では地球の衛星軌道に漂うゴミ(デブリ)を船外活動で回収する仕事等に従事する、宇宙時代のサラリーマン青年。

彼が所属するデブリ回収船の女性船長であり、地球に愛する夫と息子を置いて単身働く力強いアメリカ人おっ母さんのフィー。
デブリ衝突による事故によって妻を亡くした過去を持つ同僚のロシア人ユーリ。
「愛こそが全てを救う」とまっすぐに信じる、ハチマキとは正反対の意見のデブリ回収船の若手女子、タナベ。


それぞれに価値観の違う人々との交流や出会い、答えない葛藤の中で、ハチマキは「目的のために様々な思いを犠牲にしている現在の自分」の在り方に疑問を抱き、もがきながら、少しづつ自分なりの答えを見つけていきます。



宇宙を漂う「ゴミ」の問題

「スペースデブリ」とは地球の衛星軌道上を周回している人工物体(不能・不要になった人工衛星からロケットの切り離しによって生まれた破片、大きなサイズの物体からほんの数ミリのサイズの物体まで)のことです。


秒速数キロメートルで移動しているために、ほんの数センチというサイズでも、衝突速度によっては宇宙船に致命的な損傷を与えることもある非常に危険な物です。


『プラネテス』第4巻表紙

『プラネテス』第4巻表紙


宇宙開発が進むにつれ、デブリの数は増え続けると考えられていて、実際にこれまで(2012年現在まで)の宇宙開発によっても生み出されています。デブリ同士が衝突することによってもさらに増殖を続け、今後の宇宙開発を妨げる大きな要因になるとも考えられています。


『プラネテス』で描かれる時代では、この問題が表面化しており、「デブリ」を回収・処理することは「宇宙開発」という華やかな響きがある分野の中で、地味ながらも必要不可欠なこととして描かれています。




時代が変わっても、人間は変わらない

本作の魅力はこういった「実際的な問題」を取り扱った、現実の向こう側に見えそうな、地続き感のある世界を描いているところにあります。


『プラネテス』の描く未来では、人類は宇宙へと活動の場を広げていますが、依然として地球上の紛争・貧困の問題、思想の対立は解決されず、また人間の本質的な「悩み」「苦しみ」「葛藤」も同じように在り続けるのです。


イマジネーションが膨らむ未来の「宇宙」という舞台、エンターテイメント作品らしいスリリングな物語展開の中で、同時に人間の「内面」の問題とも正面から向き合い一種哲学的な側面をも持った本作は、非常に質の高いSFマンガ作品と言えるでしょう。



「プラネテス」とは「惑星」の意味ですが、作品中のサブタイトルにもあるように本来は「惑い人」を意味していました。ハチマキたちが戸惑いながらも成長をしようとする姿に、あなたも胸をうたれるはず!