

スピードテストアプリ、どうしてこんなに結果が違う?
Google Playには、スマホやタブレットの通信速度を計測するスピードテストアプリが複数公開されています。「○○駅だと、ちょっとデータのダウンロードが遅いなぁ」とか、「うちの無線LAN(Wi-Fi)、調子悪いなぁ」といった時に、どのくらいの速度が出ているのかチェックするときに役立つアプリです。
しかし、スピードテストアプリを使い比べてみると、アプリによって計測結果が大きく異なることがあります。また、「最大○○○Mbps」とうたう最高通信速度どおりの通信速度になることは、まずありえません。一体なぜなのでしょうか。今回の特集では、その理由について解説します。
最新の2015年夏スマホで計測!
今回、計測で使うスマホは、ドコモの「ARROWS NX F-04G」(以下「ARROWS」)と、auの「isai vivid LGV32」(以下「isai」)。いずれも2015年夏の最新機種で、離れた帯域の電波を束ねて使ってモバイル通信の安定化・高速化をはかる「キャリアアグリゲーション」(CA)に対応しています。CA対応エリアでは、下り最大225Mbpsで通信できます。
キャリアアグリゲーションについてはこちらの記事もチェック
「ARROWS」はそれに加えて、無線LAN(Wi-Fi)において複数のアンテナを同時に使って送受信する「MIMO」(Multiple Input/Mulitiple Output)に対応していてます。EEE802.11ac規格で、かつアンテナが送信2本・受信2本(2×2)以上あれば、最大で867Mbpsで通信できます。


計測で使う「ARROWS NX F-04G」(左)と「isai vivid LGV32」(右)。いずれも筆者の私物
スピードテストアプリは、下記の4つを使用しました。
- 『RBB TODAY SPEED TEST』
- 『Speedtest.net』
- 『ドコモスピードテスト』
- 『スピードテスト(Internet Speed Test)』
このうち、『Speedtest.net』と『スピードテスト』は、計測サーバを選択(オプション機能)でき、日本国内はもちろん、海外サーバとの通信速度を計測できます 。
スピードテストアプリでは通常、ダウンロード(下り)・アップロード(上り)の通信速度とPING値(データ要求後、サーバからの応答を受信するまでの時間)を計測できます。
通信速度は、KB/s(キロバイト毎秒:1KB=1024バイト)、MB/s(メガバイト/秒:1MB=1024キロバイト)またはbps(ビット毎秒:8ビット=1バイト)単位で、PING値はミリ秒(10分の1秒)単位で計測します。
※1バイト:半角英数字1文字分のデータ量


アプリは定番どころを用意:『RBB TODAY SPEED TEST』(左)『Speedtest.net』(右)


アプリは定番どころを用意:『ドコモスピードテスト』(左)『スピードテスト』(右)
いざ、計測!
実際の計測では、各アプリ3回ずつ計測した平均値を掲載しています。計測サーバを選択できる『Speedtest.net』では、Sumida(東京都墨田区に設置された)サーバを選択し、計測サーバが無料版ではランダムとなる『Internet Speed Test』では計測に使う2端末で同じ接続サーバになってから計測しています。
1. 筆者の自宅(東京都足立区)
最初は、筆者の自宅です。平日の午前9時30分ごろに計測しました。
せっかく自宅ということで、モバイル回線(LTE)だけではなく、ブロードバンド回線につながった自宅のWi-Fiでも計測してみました。ブロードバンド回線はNTT東日本の「フレッツ 光ネクスト マンション・ギガラインタイプ」(上下最大概ね1Gbps)と「@nifty」の組み合わせ、Wi-FiルータはAppleの「AirMac Extreme(11ac)」(MIMO 3×3構成:最大1.3Gbps)を使っています。
まず、モバイル回線の結果を見てみましょう。
自宅モバイル回線(「ARROWS」)
アプリ名/速度 | RBB TODAY SPEED TEST | Speedtest.net | ドコモスピードテスト | スピードテスト |
PING値(ミリ秒) | 33 | 36 | – | 55 |
下り通信速度(Mbps) | 41.63 | 32.54 | 37.20 | 30.28 |
上り通信速度(Mbps) | 21.79 | 15.86 | 18.00 | 11.77 |
自宅モバイル回線(「isai」)
アプリ名/速度 | RBB TODAY SPEED TEST | Speedtest.net | ドコモスピードテスト | スピードテスト |
PING値(ミリ秒) | 119 | 156 | – | 52 |
下り通信速度(Mbps) | 37.30 | 27.52 | 36.24 | 13.87 |
上り通信速度(Mbps) | 1.06 | 2.03 | 2.00 | 3.57 |
筆者宅のモバイル回線は、ドコモの方が概ね応答速度、通信速度両面で良好な傾向を示しています。auは、ドコモと比較すると上り通信速度が厳しい結果となりました。
自宅ブロードバンド回線(「ARROWS」)
アプリ名/速度 | RBB TODAY SPEED TEST | Speedtest.net | ドコモスピードテスト | スピードテスト |
PING値(ミリ秒) | 6 | 12 | – | 15 |
下り通信速度(Mbps) | 261.07 | 341.39 | 150.01 | 69.8 |
上り通信速度(Mbps) | 201.96 | 61.48 | 57.52 | 22.84 |
自宅ブロードバンド回線(「isai」)
アプリ名/速度 | RBB TODAY SPEED TEST | Speedtest.net | ドコモスピードテスト | スピードテスト |
PING値(ミリ秒) | 5 | 8 | – | 17 |
下り通信速度(Mbps) | 207.14 | 282.28 | 189.13 | 92.28 |
上り通信速度(Mbps) | 210.87 | 83.91 | 193.32 | 39.86 |
2.JR新橋駅5・6番線ホーム(東京都港区)
次は、「サラリーマンの街」とも言われる東京都港区新橋にあるJR新橋駅。ここは、ドコモのLTE-Advancedサービス「PREMIUM 4G」と、auの4G LTEにおける「キャリアアグリゲーション」に対応しているはずのエリアです。
ドコモは下り225Mbos、auは下り150Mbpsの通信に対応しています。とりあえず、計測してみます。


「サラリーマンの街」新橋。夜の帰宅客の多い時間帯に計測
JR新橋駅(「ARROWS」)
アプリ名/速度 | RBB TODAY SPEED TEST | Speedtest.net | ドコモスピードテスト | スピードテスト |
PING値(ミリ秒) | 36 | 37 | – | 21 |
下り通信速度(Mbps) | 23.80 | 13.27 | 10.18 | 15.67 |
上り通信速度(Mbps) | 7.54 | 3.53 | 5.06 | 6.93 |
JR新橋駅(「isai」)
アプリ名/速度 | RBB TODAY SPEED TEST | Speedtest.net | ドコモスピードテスト | スピードテスト |
PING値(ミリ秒) | 46 | 52 | – | 62 |
下り通信速度(Mbps) | 3.01 | 1.09 | 15.66 | 5.21 |
上り通信速度(Mbps) | 6.49 | 1.11 | 7.63 | 14.2 |
ということで、いずれもキャリアアグリゲーション対応エリアですが、数値的にはあまり振わないように見えます。そもそも、キャリアアグリゲーションは、通信速度よりも混雑地での通信品質改善を目的に導入を進めているものです。
宣伝上は、数値の方が分かりやすいので、プロモーション活動では速度が前に出てしまうのですが…。なので、両端末ともにキャリアアグリゲーション対応のおかげでまずまずの通信ができている、とも言えそうです。
結果的には、おおむねドコモのほうが良好でした。
3.JR南浦和駅西口前(さいたま市南区)
次は「ベッドタウン代表」ということで、さいたま市南区にあるJR南浦和駅をチョイス。南浦和駅、というと京浜東北線の拠点駅で(京浜東北線の車両が所属する車庫がある)、周囲には閑静な住宅街が広がっています。土曜日の14時ごろ、日差しが意外とキツい時間帯に計測しました。


南浦和駅の西口正面にあるベンチの前で計測。スマホ2台を手に、冷たい視線を感じながら計測…
JR南浦和駅西口前(「ARROWS」)
アプリ名/速度 | RBB TODAY SPEED TEST | Speedtest.net | ドコモスピードテスト | スピードテスト |
PING値(ミリ秒) | 33 | 43 | – | 35 |
下り通信速度(Mbps) | 29.56 | 42.28 | 60.92 | 28.84 |
上り通信速度(Mbps) | 16.80 | 4.94 | 4.99 | 8.24 |
JR南浦和駅西口前(「isai」)
アプリ名/速度 | RBB TODAY SPEED TEST | Speedtest.net | ドコモスピードテスト | スピードテスト |
PING値(ミリ秒) | 45 | 33 | – | 58 |
下り通信速度(Mbps) | 52.19 | 31.80 | 39.47 | 47.99 |
上り通信速度(Mbps) | 7.12 | 10.92 | 32.16 | 7.57 |
南浦和駅では、ドコモとauの通信速度がスピードテストによってバラつきました。同じ場所で、同じ位置でひたすら通信テストをしたのに、一体どういうことなのでしょう…。
なんでこんなに「差」が出るの?
ということで、同じ位置、同じ場所なのに通信速度や応答速度に差が結構出ることがあります。異なるキャリア間ならまだしも、同じキャリアであっても、テストアプリによっては差が出てしまっています。これは一体どうしてなのでしょうか。考えられることをいくつか、かんたんに解説してみます。
1.スマホと基地局・アクセスポイントの位置関係
スマホは、基地局の電波やWi-Fiアクセスポイントの電波をつかんで通信します。電波というものは、何がなんでも貫き、強くまっすぐ届くわけではありません。材質による差はありますが、建物や障害物、いろいろなものにぶつかることで弱まったり曲がったりします。もちろん、空気も電波を弱める要素のひとつです。アンテナの位置・向き・角度も重要です。
そのため、同じ家・建物でも、階や部屋によって通信速度は大きく変わることがあります。「窓際ならつながるのに、部屋の中に入ると携帯電話が全然つながらない」とか、「2階にWi-Fiルータ置いたら、1階で全然つながらない」ということが発生するのはこれが原因です。
携帯電話回線の電波が不安定・不感の場合は、まずキャリアのWebサイトや電話窓口に相談してみましょう。結果によっては、実地調査の上、リピーター(電波を中継し増幅する装置)やフェムトセル(自宅のブロードバンド回線を使った小型基地局)を設置したり、基地局の設定を調整したりするなど、対策を取ってくれることもあります。


電波の中継・増幅で対策できる場合はリピーターを設置。それも困難な場合はフェムトセルを設置する(ドコモのホームページから引用)
Wi-Fiアクセスポイントの電波が不安定・不感の場合は、アクセスポイントの場所を調整したり携帯電話と同様にリピーターを使ったりする対策が手軽です。
Wi-Fiリピーターはコンセントに接続するだけのお手軽タイプのものもありますし、Wi-Fiルータの設定を変えるとリピーターとして使えるものもあります。有線LANケーブルをはわせる余裕があるなら、Wi-Fiアクセスポイント(ルータ)そのものを、電波の弱い・届かない場所にもう1台設置するのも手です。
2.基地局・アクセスポイントの同時通信人数
また、基地局・アクセスポイントに同時にアクセスしている人数も、実は速度を大きく左右します。極端に単純化すると、2人が同時アクセスすると通信速度は2分の1に、3人がアクセスすると3分の1に…というふうになります。
混雑している電車、施設やイベントで携帯電話がつながりにくくなるのは、これが原因です。大規模なイベントをやる際に移動基地局車を持ってきて対策するのは、1つの基地局あたりの収容人数を減らすことで、つながりやすくするためです。


移動基地局車は、1つの基地局あたりの収容人数を減らしてつながりやすくするための対策
3.基地局から先の回線容量や通信経路
ここまでは、どちらかというとスマホの電波まわりの話でしたが、基地局・アクセスポイントから先の回線のスピードも結構重要です。
例えば、自宅で使っている光ブロードバンド回線が100Mbpsだとすると、1.3Gbps対応のWi-Fiルータを用意したところで、100Mbps以上の速度でインターネット通信することはできません。これは携帯電話の基地局とコアネットワークと間の通信も同様で、ここがボトルネックとなって速度が出ない、ということはありうる話です。
さらに、携帯電話事業者(キャリア)やインターネットプロバイダーが、他のキャリア・プロバイダーあるいはネットサービス事業者と相互接続している回線の通信速度にも影響されることもあります。テストアプリによって結果に大きな差が出る場合の原因のひとつはここにあります。
もっと言えば、スマホからスピードテストアプリがアクセスするサーバまでの通信経路も通信速度に影響する可能性があります。インターネットはその特性上、同じサーバ(Webサイト)にアクセスする場合でもタイミングによって通過する経路が変わる場合があります。経路変更が、データ通信速度に影響する場合もあります。
このように、スピードテストの結果は、さまざまな通信上の条件が積み重なって出てくるものです。ひとつのテストの結果が“唯一無二”あるいは“絶対”ということはありません。
通信容量を使い切っていないのに遅いな、と感じる場合は、できるだけ複数のスピードテストで、場所や通信方法を変えながら速度測定して原因を絞り込む、というやりかたが現実的なのかもしれません。
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